信者間で養子縁組が繰り返されていた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について、厚生労働省が養子縁組あっせん法違反での刑事告発は困難だと判断していることがわかった。告発は事実上、見送られる見通しだ。公訴時効(3年)にかからない時期に縁組をした人から情報を得られず、あっせんの事実を明らかにできなかった。行政指導に対し、教団側が対応していることも考慮した。
2018年4月に施行された同法は、無許可での仲介事業を禁じている。旧統一教会は許可を得ていないが、多数の信者同士で縁組が行われており、厚労省は教団があっせんしていた疑いもあるとみて、昨年11月に調査を開始。教団は同法の施行後、31件の縁組が行われたと明らかにした。
厚労省は31件の養親の氏名や生年月日を示すよう求めたが、教団側は回答を拒否。信者から「養子縁組申請書」の提出を求めていることは認めたものの、組織的なあっせんは否定した。
養子になった人からは厚労省に「教義のための道具にされた」などの声が寄せられた。ただ、告発対象時期に縁組した養親らから証言を得られておらず、今後の見通しも立っていない。
厚労省は捜査当局とも協議したが、「養親や実親を特定できておらず、あっせんの実態が明らかではない。行為の悪質性の判断も難しい」などと告発に消極的な意見が相次いだという。
一方、厚労省は1月23日に教団に対し、縁組を仲介していると受け取られるような出版物の表現について、適切な記載を求める行政指導文書を送った。
教団側は31日までに、縁組の合意後に教団に報告を求める記載や、「子どもの多い家庭は分かち合う責任がある」との記述を削除、修正した改訂版を厚労省に送付した。
厚労省はこうした経緯も踏まえ、現状では告発は難しいと判断したとみられる。今後も情報収集を続け、あっせんの実態が明らかになれば、告発を含めた対応を検討するという。