大阪市淀川区の建物2階の一室で、階下の弁当店で勤務するベトナム国籍のヴォ・ティ・レ・クインさん=当時(31)=を殺害して現金を奪ったとして、強盗殺人罪などに問われた山口利家(としや)被告(60)に無期懲役を言い渡した3日の大阪地裁判決を受け、クインさんの夫、ファン・タン・ユィさん(36)は閉廷後に大阪市内で記者会見。「とても心が痛んでいるが、判決には満足している。(クインさんには)天国で安らかに休んでほしいと伝えたい」と話した。
法廷で意見陳述もしたユィさん。クインさんの指輪をネックレスにして、肌身離さず身に着けて裁判所に足を運んだ。
ユィさんによると、クインさんは、幼い頃から「ドラえもん」や「セーラームーン」が好きで、日本に興味を持つようになった。ベトナムで日本語を学び、日本語教師にもなった。
平成28年、すでに日本で暮らしていたユィさんと生活するために来日。大阪城公園が好きで、よく2人で散歩した。「礼儀正しい日本人が好き。安全に暮らせる日本にずっと住みたい」と話していたという。
弁当店やコンビニで働いていたのは、ある夢があったからだ。大学院に通ってさらに日本語の理解を深め、「ベトナム人に日本語や日本文化を教える小さな学校を開きたい」。
クインさんの夢は絶たれてしまったが、ユィさんは「妻に代わって日本語の学校をつくる夢の実現を目指したい」と語った。
判決によると、山口被告は昨年4月3日午前、クインさんを自宅に誘い、所持金を渡すよう告げたが抵抗されたため、首を絞めて殺害。現金約2万6千円を奪い、遺体をテレビ台と壁の間に押し込んで隠した。
判決理由で中川綾子裁判長は、「全く落ち度のない未来ある女性が理不尽に命を奪われ、夢を打ち砕かれた結果は極めて重大」と指弾した。