九州北部大雨1カ月 今も汚れや臭い 油被害で特例適用の住宅再建、被害認定に期待

九州北部を襲った8月末の記録的大雨による災害発生から、28日で1カ月となった。鉄工所から流出した大量の油で住宅約230棟に被害が出た佐賀県大町(おおまち)町では、多くの住民が今も汚れや臭いが落ちにくい油被害に悩む。内閣府は、住宅の被害認定の特例として、通常は対象外となるレベルの浸水被害でも油の影響があれば公的支援を受けられるよう町に通知し、生活再建を後押ししている。
1990年の豪雨でも自宅が床上浸水し、今回と同じ鉄工所から流れ出た油による被害に見舞われた主婦、灰塚美代子さん(66)は、基礎を約1メートルかさ上げして建て直した自宅が今年8月28日の大雨で、再び大量の泥水と油に襲われた。
避難先から自宅を確認に行くことができたのは、水位が膝丈まで下がった発生2日後。水の中を進んで向かった我が家は、油にまみれた庭の草木が玄関先に流れ着き、畳や網戸には黒い油の染みがあった。大半の家電や家具、車は廃棄するしかなく、屋内の一部は今も油の臭気が残る。
「せっかく建て直した家だから、また家族で住めるように戻したい」。自宅2階に暮らしながらそう語る灰塚さん。罹災(りさい)証明書発行のため町が実施する被害認定調査を前に期待を寄せるのが、内閣府が示した特例だ。
被災者生活再建支援法に基づく建物被害の支援金は「全壊」で最大300万円など。支給の対象は大規模半壊以上に限られ、床上浸水が30センチ未満の場合は除外となる。しかし、11日付の通知で内閣府は30センチ未満でも「個々の被害状況を踏まえた適切な調査」を実施するよう町に求めた。また、住宅の応急修理費が1世帯当たり最大58万4000円の公費で負担される災害救助法の適用も、本来は半壊以上となるが、今回は油の被害を受けた被災者には「弾力的に対応」できるとした。全壊が対象の応急仮設住宅への入居についても同様だ。
25日現在、町内で大規模半壊以上の住宅は計145棟。それに対し、油被害は232棟に上っており、11日の臨時記者会見で山本順三防災担当相(当時)は、通知に基づき被害認定を進めれば「油流出の被害を受けた床上浸水以上の住宅はおおむね対象水準になる」との見方を示した。内閣府の担当者は「今回の事態の特殊性をみて対応した。町は油の被害に留意して、被害認定に当たってほしい」と話す。
大町町を含む佐賀県内7市町では災害救助法に基づく支援の申請が始まっている。同町では28日現在、17世帯26人が避難所に身を寄せているほか、罹災証明書は申請があった281件のうち224件が交付された。県が民間の物件を借り上げる「みなし仮設住宅」はこれまで1件申請があった。同県武雄市でも11世帯29人が避難生活を続けている。【竹林静】