志摩観光ホテル(三重県志摩市阿児町)の第7代総料理長を務める樋口宏江さん(51)がフランスの食文化普及に貢献したとして、同国の「農事功労章シュバリエ」を受章した。13日にホテル「ザ ベイスイート」で伝達式があり、ジュール・イールマン在京都フランス総領事から勲章が授与された。
樋口さんは「受章は身に余る喜び。性別に関係なく、成長の機会を与えてくださった環境に感謝しています」と謝辞を述べた。「海にも山にも恵まれた伊勢志摩の素晴らしい食材や、熱い思いを持った生産者さんがあってこそ、幸せな気持ちでキッチンに立てる。志摩観光ホテルの料理哲学を守りつつも挑戦を続け、深化と進化で次世代へとつないでいきたい」と喜びを語った。
樋口さんは四日市市出身。母の影響で子供の頃から調理に親しみ、「家族においしいと喜んでもらえるのがうれしかった」と料理人を志した。大阪の辻調理師専門学校を卒業後、1991年に志摩観光ホテルに入社。94年にホテル志摩スペイン村のレストラン「アルカサル」シェフ(料理長)、2008年に志摩観光ホテルのフレンチレストラン「ラ・メール」のシェフ、14年に43歳の若さで同ホテルの第7代総料理長に就任した。
16年には同ホテルをメイン会場に開催された主要国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)でワーキングディナーを担当。地元の食材を生かしたフランス料理と、日本文化を融合させたメニューで各国首脳から好評を博した。
イールマン総領事は「樋口さんの素晴らしい才能はもちろん、ずっとこの地でキャリアを積み重ね、女性が少ないガストロミーの世界で総料理長として活躍されていることが本当に素晴らしい。今度は妻と一緒に樋口シェフの料理を味わいに来ます」とたたえた。
フランスの農事功労章シュバリエは、1883年に創設されたフランスの勲章の一つ。志摩観光ホテルでは第5代総料理長を務めた故・高橋忠之氏も受章した。【小沢由紀】