「寒さで凍えるウクライナの人たちに使い捨てカイロを送ろう」と、山形県と福島県の市民団体が始めた運動に全国から約31万個の使い捨てカイロが寄せられた。日本人のあたたかい気持ちを込め、ウクライナへ順次送られている。
昨年2月のロシア軍のウクライナ侵攻からほぼ1年が経とうとしている。厳冬期のウクライナでは、氷点下にもなる日も多く、ウクライナの人たちは、ロシア軍のインフラ施設への攻撃で停電や断水が起こり、暖房や水のない生活を強いられている。
ウクライナの惨状を知るたびに、「ウクライナの人たちを支援する力になりたい」。そんな思いが福島市の武田徹さん(82)に募った。武田さんも平成23年の東日本大震災で福島市から山形県米沢市に避難した経験を持つ。武田さんは昨年12月、「寒さに凍える人に日本で発明された携帯カイロを送ろう」と思い立ち、市民団体「ウクライナに『使い捨てカイロ』を送ろう」会をつくり、カイロ送付を呼びかけた。
呼びかけの声は、福島、山形両市から両県内に、そして全国へと広がり、子供から高齢者までがカイロを送った。使い捨てカイロは北海道から沖縄まで送られ31万個を超え、毛布や衣料品、そして国内だけでなく米国在住の日本人からも支援金も届いた。
届けられた使い捨てカイロには、「極寒の中で寒さ対策の一助になれば。過酷な環境に負けないでください」「私は元陸上自衛官で冬季の演習で凍り、壕で冷えた装甲車内で寒さを経験しています。一日も早い戦争の終息をお祈り申し上げます」などと、ウクライナの人たちを思いやる手紙も添えてあった。
会の運動に賛同した、第一貨物山形支店がカイロを一括保管し、郵政ロジスティクスが第1便を引き受け、すでに約2万5千個がウクライナのキーウに到着したという。
「私も12年前に多くの人に助けられた。いつかお返しをしたいと思い続けて来た」。そう語る武田さんは、平成23年の東日本大震災で被災し、妻とともに福島市から山形県米沢市に移り、暮らしてきた。実家は一部損壊し、水漏れも続いたが、いまは前を向き、暮らしている。「お返しするのは、日本人でなくてもいい。いま一番困っているウクライナの方々に少しでもお返しできれば」
残りのうち、24日に約3万個を空輸で送られ、約24万個を来年の冬に向け7月に船便で送られる。山形県庁で15日、記者会見した武田さんは「全国から驚くほどの善意が集まった。第1便に続き、高齢者や子供、女性にいち早くウクライナの人たちに届けたい」。全国から寄せられた日本人の善意。多くの人のあたたかい気持ちをカイロにのせ、ウクライナに送られる。