福島県立博物館などの日米研究チームは15日、モンゴルにある約8000万年前の白亜紀の地層で見つかった恐竜「ピナコサウルス」の化石から、喉の骨の部位を特定したと発表した。形状が鳥類に近く、恐竜が鳥のように発声できた可能性があるという。同日、オンラインの学術誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に、成果をまとめた論文が掲載された。
ピナコサウルスは、背中を覆う「皮骨」がヨロイのように身を守る四足歩行の草食恐竜。今回、喉の骨の部位が特定されたのは、米自然史博物館が2005年、モンゴルのゴビ砂漠で発掘した全長約3メートルの化石だ。
同博物館のほか、県立博物館と北海道大が頭部の化石を調べ、「喉頭」という気管の入り口の部位を形作る複数の骨を識別した。四足歩行の恐竜で喉頭の化石が特定されたのは世界初。
チームは、インコやワニなど100点以上の鳥類や 爬虫 (はちゅう)類の骨標本と比較した。その結果、鳥類との共通点が多く、発声するのに適した形だったという。鳥類は、一部の恐竜が生き残って進化したとされる。
チームの吉田純輝・県立博物館学芸員は「異なる時期に生息した他の恐竜の骨も特定できれば、進化の解明が期待できる」と語る。
国立科学博物館の真鍋真副館長(恐竜学)の話「鳥類の鳴き声の起源が恐竜に遡ることは想定されていたが、直接の祖先ではない恐竜から鳥類と似た構造の喉頭骨が発見されたことは驚きだ。鳴き声でコミュニケーションが取れた可能性があるということは、恐竜の社会性を考える上で興味深い」