上野動物園(東京都台東区)で19日、中国へ返還されるジャイアントパンダ、シャンシャン(雌、5歳)の最後の一般公開があった。事前抽選で当選した約2600人が別れを惜しんだ。観覧時間は1人あたり2分程度と短かったが、愛くるしい姿をスマートフォンのカメラ機能で撮影したり、「ありがとう」「バイバイ」と呼び掛けたりした。
台東区の小学1年、曽我俊太朗さん(7)は「また(上野に)帰ってきてほしい」と話した。母奈津子さん(39)も「自分の息子(の成長)にも重なり、ニュースなどでずっと見守ってきた。さみしい」と残念そうだった。
また、シャンシャンの観覧が縁で知り合いになったという神奈川県鎌倉市の主婦、仁木典子さん(55)と東京都墨田区の主婦、堀内由貴さん(55)は、タケを食べている姿をたくさん撮影したという。仁木さんは「癒やされるかけがえのない存在で、数え切れないくらい見に来た。ありがとうという気持ち」と話した。
シャンシャンは2017年6月に上野動物園で誕生。21年6月に生まれた双子のシャオシャオとレイレイの姉にあたる。当初、2歳をめどに返還される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響などで5回延期され、21日に所有権がある中国に向けて出発する。午前中に上野を離れ、その日のうちに中国・四川省のパンダ保護研究センターに到着する予定。
パンダは希少動物の国際取引を規制するワシントン条約で譲渡が禁止されている。シャンシャンの両親は共同の「繁殖研究」を目的に中国から貸与されているため、シャンシャンの所有権も中国にある。シャンシャンは1月下旬に発情期を迎えていることが確認されており、中国で相性のいいパートナーを探すことになる。
上野に初めてパンダが来たのは1972年。日中国交正常化を記念し中国から雄のカンカンと雌のランランの2頭が贈られた。これまでに中国から7頭が来園し、生後間もなく死んだ2頭を含め、7頭が誕生した。育ったのは86年生まれのトントン、88年生まれのユウユウ以来、シャンシャンが3頭目。上野では29年ぶりの「育児」となった。4、5頭目になるシャオシャオとレイレイも順調に育っている。【柳澤一男】