昨年12月にあった東京都中野区の強盗傷害事件に加え、今年1月の狛江市の強盗殺人事件にも関与した疑いのある永田陸人容疑者(21)。まじめな仕事ぶりで勤務先での評判も良かった一方、賭け事での借金に追われる日々を過ごしていた。永田容疑者はどんな人物だったのか。
「ボコボコにして血だらけにしましたよ」
永田容疑者は12月下旬、中野区の事件を伝えるネットニュースを見せながら、得意げに語ったという。相手は永田容疑者が暮らす金沢市のアパートの別の部屋に住む男性(68)。高級腕時計「ロレックス」3本を取り出し、換金できる店を尋ねてきたこともあった。
1月17日には「駐車場に不審車がいたら電話して。刑事かもしれない」と男性に依頼。警察の動きを警戒していたとみられ、「遅かれ早かれ捕まると思う」とも話していたという。
その2日後の1月19日、狛江市の事件が起きた。
知人や同僚らによると、永田容疑者は京都市出身で、3年ほど前に金沢市に移住したとみられる。未経験で建設業に飛び込み、三つの会社を転々とした。どの職場の関係者も「仕事熱心で遅刻も欠勤もなかった」「素直で人なつっこく、ムードメーカーだった」と好印象を口にする。
「早く一人前になりたい」と周囲に語り、重機操縦の資格取得を目指し、勤務後に1人残って練習する姿も度々目撃されていた。
ただ、1年ほど前から競艇にはまり、同僚らに「50万円勝った」「朝から30万円負けて、金がなくなった」などと話すようになったという。
勤務先社長「信頼していた」
勤務先の社長によると、昨年11月ごろから職場に借金返済を迫るヤミ金融からの電話が相次いだ。社長は「複数のヤミ金から100万円超の借金をしていたと思う。本人はごまかしたが、相当追い込まれていたのではないか」と想像する。
永田容疑者は12月5日午前10時50分ごろに中野区で事件を起こしたとされる。ただ、同日午後7時半からの夜勤には通常通り出勤していたという。事件直後に金沢市に戻ったとみられるが、社長は「変わった様子はなかった」と振り返る。
永田容疑者は狛江事件前日の1月18日は「用事が入った」、19日には「近しい人が亡くなり葬式がある」と上司に連絡。身柄を拘束された20日は、警視庁の事情聴取を受けたことを明かした上で「明日には行けると思う。本当にすみません」と伝えていたという。
勤務先の社長は「信頼していただけにショックが大きい」。元同僚の30代男性は「陸人が関与したなら、なぜそんなことをしたのか理由を聞きたいし、反省してきちんと罪を償ってほしい」と話した。
◇
一方、同じ容疑で埼玉県川口市の野村広之容疑者(52)も逮捕された。
同じ団地の住人によると、野村容疑者は10年ほど前からこの団地で1人暮らしを続けていた。70代の住人男性によると、月約5000円の駐車場代を約5カ月間滞納していたが、今年1月上旬に滞納分を一括で支払ったという。管理費や修繕積み立て費を滞納することもあり、男性は「金にルーズなところがあった。どんな仕事をしていたか分からないが、夕方に出かけ、朝帰ってくる生活だった」と話した。【岩崎歩、高井瞳】