聴覚に障がいがある女の子が重機にはねられて死亡した事故をめぐり、両親が運転手らに損害賠償を求めていた裁判で、2月27日に大阪地裁は運転手らに約3700万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。2018年2月、大阪市生野区の聴覚支援学校の北側の歩道に車道を走っていた重機が下校中だった児童らに突っ込み、児童や教諭5人が死傷しました。この事故で、聴覚支援学校に通っていた井出安優香さん(当時11)が亡くなりました。安優香さんの両親は重機を運転していた運転手らに対し、2020年に約6100万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。この裁判では、将来得られるはずだった収入いわゆる「逸失利益」について、被告らと両親らの主張は違った主張となりました。運転手側は安優香さんが聴覚障がい者であるとして、一般労働者の平均賃金の約60%(年収約290万円)となる「聴覚障がい者の平均賃金」で算出すべきと主張。一方、この主張に対し両親らは一般労働者の平均賃金(年収約500万円)を基に考えるべきだとしました。これまでの裁判で父親の努さんは「娘に会いたいという気持ちから死にたいと思うこともある。この裁判は人権差別やと思います」と訴えました。判決を前にした2月15日、両親らは「障がいを理由に将来得られる予定の収入に差をつけるのは差別だ」として約1万筆の署名を大阪地裁に提出。署名はこれまでに約12万筆にのぼっています。 そして、2月27日に大阪地裁は運転手らに約3700万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。判決の中で大阪地裁は、「安優香さんが死亡した際の聴覚障害者の収入は全労働者の平均と同程度であったとはいえない」と指摘しました。 一方で、「安優香さんは両親からの十分な支援があったことなどを考慮し、将来的に様々な就労の可能性があった」としました。そして、争点となっていた『逸失利益』は両親らが求める全労働者と同額ではなく、全労働者平均の85%にあたる約422万円で年収を計算すべきとしました。 ▼遺族は判決に落胆「悔しくてたまらない」 2月27日に大阪地裁の判決後に井出安優香さんの両親らは大阪市内で会見を開き、「(判決内容に)落胆した気持ちです。裁判所は差別を認めたんだな」などと判決への憤りを語りました。両親らは裁判で一般労働者の平均賃金(年収約500万円)を基に考えるべきだとしていました。 (井出安優香さんの父・努さん) 「本当の私共は被害者でありますけれども、本当の被害者は安優香なんですよ。なんでそこまで娘のことを努力を否定されないといけないのか、悔しくてたまらないです」 (井出安優香さんの母親) 「聴覚に障がいを持って生まれたら、どんなに努力しても、ただ、聴覚に障がいを持っているというだけで、その子の人生を否定されなければいけないんですかと。聴覚障がい者だというその一言で、社会に受け入れてもらえないんですかって。やっぱりそれって差別だなって思います」