政府は28日、原子力発電所の「60年超」運転を可能にする、五つの関連法の改正案を一本化した束ね法案を閣議決定した。運転期間の長い原発には新たな認可制度も設ける。2011年の原発事故で停滞した原発政策が新たな展開を迎える。
束ね法案は「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」。原子力基本法や電気事業法、原子炉等規制法(炉規法)、使用済み燃料再処理法、再生可能エネルギー特別措置法を含む。脱炭素への取り組みを掲げた「GX実現に向けた基本方針」に基づく対応だ。
具体的には、炉規法で定めていた原発の運転期間を、電事法で規定する。「原則40年、最長60年」としてきた運転期間は、原子力規制委員会の安全審査や裁判所の仮処分命令などで停止した期間に限って延長できるようにする。事実上、60年超運転を認める。電力各社などに適正な事業運営を求める電事法に規定することで、原発の安全性と電力の安定供給を両立させる。
一方、炉規法には、新たな安全規制を設ける。運転開始から30年超の原発には、10年以内ごとに規制委から安全に関する認可を受けるよう義務づける。経年に応じて厳格な安全確認を行い、事業者に劣化の評価や、管理体制の見直しを促す。
また、再処理法の改正では、核燃料サイクル事業を担う認可法人「使用済燃料再処理機構」に廃炉に関連する業務を追加する。電力各社などに、廃炉費用の拠出を義務付ける。廃炉時代に備える。再生エネ拡大に合わせ、送電網の整備資金を確保する新制度もつくる。電事法と再生エネ特措法に盛り込む。
運転延長を巡っては、今月13日の規制委の会合で委員5人のうち1人が反対した。政府は21日に予定していた閣議決定を延期していた。政府は今国会で束ね法案の成立を目指す。