「なぜこんなことが起きてしまったのか分からない」。初号機の打ち上げに失敗したH3ロケット計画を指揮する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田匡史プロジェクトマネージャは、憔悴(しょうすい)した表情でこう語った。日本の宇宙開発史で、打ち上げ後に指令破壊されたロケットは今回が4機目。岡田氏が「準備は万端整った」としていた初号機に、いったい何が起きたのか。
JAXAは7日午後の記者会見で、初号機は打ち上げ約5分後に第1段ロケットと第2段ロケットを予定通り分離したが、第2段ロケットのエンジンに着火せず、推進力を喪失。正常な飛行が不可能になり、指令破壊に至ったと説明した。
着火しなかった理由は現在調査中で不明だが、岡田氏はあくまで可能性の一つとして、電気系統に不具合が生じたケースを挙げる。
第2段ロケットのエンジンは、第1段ロケットから切り離された後に機体を制御するシステムが、エンジン本体にある電子回路に向けて「点火せよ」という信号を発信することで動き始める。だが、飛行時の複数のデータによると、エンジンは着火しなかった。
そのため、機体制御システムが信号を出さなかったか、あるいはエンジンに信号を送る電気系統の途中で信号が途絶えたか、信号を受けてもエンジンが反応しなかったかなど、複数のケースが考えられるという。
岡田氏らは今後、初号機の飛行記録データを詳細に検証しながら、原因究明に挑む。まずは、機体制御システムとエンジン本体の電子回路と、どちらでトラブルが起きたかを切り分ける作業に着手する。
初号機ゆえの難しさはあるものの、徹底的な原因究明と問題の解消は、今後の日本の宇宙開発にとって必須だ。岡田氏は「予断を排して幅広い視野で一刻も早く原因を究明し、H3の2号機打ち上げ計画や、国の宇宙基本計画への影響を少しでも減らしたい」と語った。