袴田さんの再審開始認める決定 最高裁の差し戻しで東京高裁

昭和41年に静岡県の一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放された袴田巌さん(87)の差し戻し審で、東京高裁(大善文男裁判長)は13日、袴田さんの再審開始を認める決定を出した。地裁の開始決定を平成30年に高裁が退け、最高裁が令和2年に差し戻していた。事件から約57年を経て、重い再審の扉が改めて開いた。
差し戻し審では、事件発生から約1年2カ月後に現場付近のみそタンク内から見つかり、確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着していた血痕の色の変化が争点となった。
弁護側は、変色状況から衣類が1年以上みそ漬けになっていたとはいえず、袴田さんがタンクに衣類を隠すことはできないとして「犯人性は否定された」と主張。検察側も実験を実施し「1年2カ月が過ぎても赤みを観察できた」などと反論した。
昨年12月に非公開で行われた三者協議では弁護側の最終弁論が行われたほか、裁判官による袴田さん本人への意見聴取も実施され、差し戻し審の審理は終結していた。
事件は昭和41年6月30日に発生。静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社の専務の男性宅が全焼、焼け跡から専務と妻、次女、長男の遺体が見つかった。
強盗殺人容疑などで逮捕された従業員の袴田さんは、いったん自白後、無罪を主張したが、55年に最高裁で死刑が確定。第1次再審請求審は平成20年に最高裁が特別抗告を棄却した。
袴田さんの姉、ひで子さん(90)が申し立てた第2次再審請求審は、26年3月に静岡地裁が再審開始を決定し、袴田さんは約48年ぶりに釈放された。30年6月に東京高裁が開始決定を取り消したが、最高裁は令和2年12月に審理を高裁に差し戻していた。