政府が14日に閣議決定した刑法の強制性交等罪などに関する改正案について、性暴力被害者の支援団体から「被害を訴えやすくなる」と評価する声が聞かれた一方、専門家からは「冤罪(えんざい)を生む恐れがある」との指摘が出ている。
NPO法人「性暴力救援センター・東京」の運営委員田辺久子さんは、「同意しない意思」という文言が盛り込まれたことや、罪名を「不同意性交等罪」に変更する法務省方針について「前進だ」と評価。「相手の意に反した性行為は罰せられるとのメッセージが広まれば、自責の念から泣き寝入りしていた人が声を上げやすくなる」と話した。
犯罪成立の要件として、「暴行・脅迫」に加え7項目の具体的行為が列挙された点に関しては、「『暴行・脅迫』がないとの理由で多くの被害届が受理されない現状が変わってくれれば」と期待を示した。
一方、刑事弁護に詳しい趙誠峰弁護士は「どういう行為が犯罪になるのかが不明確だ」と指摘する。「経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる」との要件を例に挙げ、「対象に幅があり、要件に該当するかどうかの境目が曖昧。国民にとって何が犯罪かが分かりにくく、突然処罰される恐れがあり危険だ」と警鐘を鳴らした。
甲南大の園田寿名誉教授(刑法)は、「上司と部下という関係だけで犯罪の成立が認められる可能性があり、冤罪につながる恐れがある」との見方を示す。一方で、要件が曖昧なため罪を逃れやすくなることも考えられると指摘し、「同意があったとする被告の主張に合理性があるかを判断する仕組みが必要だ」と述べた。
[時事通信社]