岸田首相は16日、韓国の 尹錫悦 (ユンソンニョル)大統領(62)と首相官邸で会談し、「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」訴訟問題などで悪化した日韓関係を正常化し、さらに発展させることで一致した。首脳が相互に訪問する「シャトル外交」の再開で合意。首相は会談で「将来に向けて日韓関係の新たな章をともに開く機会が訪れた」と語った。
韓国大統領の来日は、国際会議を除けば、2011年12月以来、約12年ぶり。会談は少人数会合と全体会合を合わせて約1時間半行われた。
尹氏は「自由民主主義の価値が重大な挑戦に直面している今、両国の協力の必要性はますます高まっている」と強調し、「両国の新たな時代に向けてともに協力したい」と応じた。
最大の懸案だった元徴用工問題について、韓国政府は、韓国の財団が被告の日本企業の賠償金相当額を支払う解決策を公表済みだ。首相は会談で、韓国政府による元徴用工問題の解決策を評価した。会談後の記者会見では、植民地支配への「痛切な反省と心からのおわび」を明記した1998年の日韓共同宣言を含め、歴代内閣の歴史認識を引き継ぐことを表明した。
シャトル外交は、2012年の 李明博 (イミョンバク)大統領(当時)の竹島上陸をきっかけに途絶えていた。首相は記者会見で、「適切な時期の訪韓を検討する」と表明した。
両氏は、2国間の経済安全保障対話の枠組みを創設する方針でも一致した。日韓が高い技術力を持つ半導体のサプライチェーン(供給網)の強化を図ることを念頭に置く。中断していた日韓の「安全保障対話」と「次官戦略対話」を早期に再開させることも確認した。
韓国の前政権が破棄を決めた日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、尹氏は記者会見で「会談で完全な正常化を宣言した」と明らかにした。
首相は会談で、北朝鮮による16日の弾道ミサイル発射について、「明白な挑発行為で、到底看過できない」と非難し、両氏は日韓、日米韓の安全保障協力を強力に推進する方針で一致した。
首相は同日夜、夕食会などで尹氏をもてなした。