政府が17日に決定した「闇バイト」などの緊急対策プランでは、交流サイト(SNS)上で高額報酬をうたって強盗や特殊詐欺の実行役を募る書き込みの削除や、資産家情報が記された闇名簿対策の強化などがポイントとして挙げられた。しかし、SNS上には闇バイトの書き込みがあふれ、削除や取り締まりは「イタチごっこ」になる可能性が指摘されている。闇名簿も現状では対策が限られており、専門家は犯罪に加担する若者らを減らすための「教育」の推進を訴えている。
AI学習カギ
一連の広域強盗事件でも、「ルフィ」などと名乗る指示役とみられる渡辺優樹容疑者(38)ら4人はSNSで実行役を募っていたとされ、メンバーを入れ替えながら、拘束されていたフィリピンの入管施設から犯行を指示していた疑いがある。
闇バイトに応募してきたのは、高額報酬に釣られた若者ら。指示は、足がつかないように、匿名性の高い「テレグラム」といった通信アプリを通して行われていた。立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「闇バイトに応募する若者は、道徳や善悪ではなく、近視眼的な経済合理性で動いている」と分析する。
若者らはグループに引き込まれると、脱退防止目的で運転免許証などの画像送信を求められ、個人情報を握られる。その上で実行役は逮捕リスクが高い犯行を次々と強いられる。実行役は「使い捨て」(捜査関係者)で、一昨年夏以降に14都府県で五十数件の強盗や窃盗を繰り返していたルフィグループの逮捕者はすでに60人以上に上る。
こうした実情を踏まえ、政府は緊急対策を決定。闇バイトの投稿を早期に発見するため、警察庁などが人工知能(AI)を活用したSNS上の自動検索を行い取り締まりを強化する。
ただ、SNSにあふれている闇バイトに関する情報は大半が「強盗」などの直接的な文言を避けている。小宮教授は「警察がAIに何を学習させるかが勝負。偏ったデータ学習では水面下の手口をAIが感知できず、犯罪を素通りするリスクがある」と指摘する。
「若者の教育必要」
闇名簿対策も難しい。種々の公的調査などを装って犯罪者側が各家庭に電話をかけて集めた資産情報の蓄積(名簿)は、犯罪者集団内で出回っても表面上は露見しない。現存する名簿も、通常の検索ではたどれないダークウェブ上を中心に売り買いされている。
このため、小宮教授は「若者への(犯罪に加担しないための)教育が重要。義務教育の段階で科学的、論理的な教育が必要で、そこに切り込まないと使い捨ての若者は減らせない」と話している。(王美慧)