袴田事件で東京高検が特別抗告を断念したことに、他の事件で再審請求をしている関係者からは歓迎の声が上がった。
鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」を巡っては、殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(95)=鹿児島県=が無実を訴えている。これまで3度にわたり再審開始決定が出たが、検察側が不服を申し立て上級審で覆され、現在は第4次の再審請求中だ。
袴田巌さん(87)の姉秀子さん(90)は、入院中の原口さんを見舞うなど交流がある。原口さんを支援する武田佐俊さん(79)=宮崎県串間市=は「秀子さんには『おめでとう』と伝えたい。アヤ子さんにも会いに行き、袴田事件の特別抗告が断念されたことを伝えたい。大崎事件にもはずみがつく」と喜んだ。日本国民救援会鹿児島県本部の野元幸一事務局長は「証拠の開示や検察側の抗告権など、再審制度のあり方を考えるべきだ」と話した。
92年に福岡県飯塚市で女児2人が殺害された「飯塚事件」の第2次再審請求弁護団の徳田靖之弁護士は「再審開始が当然で検察側の判断は遅きに失した」としたうえで「再審の流れが変わる大きな一歩になり得る」と話した。
徳田弁護士は、過去多くの再審請求事件で、検察側が再審開始決定に反発し、高裁への即時抗告や最高裁への特別抗告で流れが変わってきたと指摘。「(審理の)引き延ばしが検察の常とう手段だったが、今回はしない決断をした意義は大きい。他の再審事件でも大きな力になる」と評価した。日弁連は、再審開始決定時に検察側の不服申し立てを禁止するなどの法改正を提案しており、徳田弁護士は改めてその重要性を強調した。
飯塚事件では、久間三千年(くま・みちとし)元死刑囚が無実を訴えていたが、再審請求準備中の2008年に当時70歳で死刑が執行された。現在は妻が2度目の請求をして福岡地裁で審理中で、主任弁護人の岩田務弁護士は「事件ごとに違うが、こちらはこちらで認定が違うと主張していく」と話した。【宗岡敬介、平塚雄太】