四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島、愛媛両県の住民7人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(脇由紀裁判長)は24日、住民側の抗告を棄却し、運転差し止めを認めない決定を出した。原発の安全性に影響を及ぼす地震などについて「発生の可能性が具体的に高いとは認められない」と判断した。
主な争点は、原発に到来する恐れのある最大の地震の揺れで、原発の耐震設計の目安「基準地震動」の妥当性だった。四電は伊方原発について650ガル(ガルは加速度の単位)と設定し、原子力規制委員会も了承している。また、四電は南海トラフ巨大地震が起きた場合の伊方原発での地震動を181ガルと予測し、同委員会の審査を経たとしている。住民側は、1995年の阪神大震災後に整備された「全国強震観測網」(K―NET)では、2011年の東日本大震災などでそれらを超える地震動が観測されたとして想定は「低すぎる」などと主張していた。
決定で脇裁判長は、住民側の主張について「伊方原発に最も影響を与える中央構造線断層帯による地震は内陸地殻内地震で、発生様式が異なるプレート間地震を引き合いに基準地震動が不合理というのは相当ではない」などと指摘。「各地点の観測記録を単純に比較することで低水準だとはいえない」などと判断した。
伊方3号機を巡っては、広島高裁が17年12月と20年1月、運転差し止めを命じる仮処分決定を出し、その後四電側が申し立てた異議審で取り消されている。住民らは20年3月に広島地裁に運転差し止めの仮処分を申請。21年11月に地裁が却下したため、高裁に不服を申し立てていた。
伊方3号機は定期検査に入った2月23日以降、運転を停止している。送電が始まる稼働再開は5月25日を見込んでいる。【根本佳奈、安元久美子】
申し立て支援者、落胆の声
広島高裁の決定は午後2時ごろに出た。仮処分を申し立てた住民らが「伊方3号機差止ならず」「歴史の歯車を50年逆回転」などと記された紙を掲げると、高裁前に集まった支援者らからは落胆の声が漏れた。
住民側弁護団は広島市内で記者会見し「不当な決定」と非難した。高裁決定では住民らの生命や健康などが侵害される具体的危険性について「住民らが立証責任を負うのが原則」などとした。この点について弁護団の河合弘之弁護士は「誰もできないことを要求している」と非難した。不服申し立てについては「よく検討して決める」とした。
一方、四国電力は「伊方3号機の安全性は確保されているとのこれまでの主張が裁判所に認められ、妥当な決定をいただいたと考えている」とのコメントを出した。【岩本一希、山本尚美】
四国電力伊方原発
四国電力が唯一、愛媛県伊方町に持つ原子力発電所。九州に向かって延びる佐田岬半島の付け根に立地する。3号機(出力89万キロワット)は1994年に運転開始し、2010年からはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電が行われている。今年2月から定期検査が行われており、運転停止中。77年に運転開始の1号機、82年に運転開始の2号機(いずれも出力56万6000キロワット)は巨額の安全対策費などを理由に運転終了が決まり廃炉作業が進められている。3基はともに加圧水型軽水炉と呼ばれるタイプ。