福岡市の商業施設で2022年7月、男子中学生の首を包丁で刺して全治10日のケガを負わせたとして、傷害などの罪に問われていた女性に対し、福岡地方裁判所は3月15日、懲役2年、保護観察付きの執行猶予5年の判決を言い渡した。 報道によると、女性に軽度の知的障害があること、半身麻痺があること、被害者との示談が成立していることなどから、保護観察付きの執行猶予となったという。さらに、交通事故の後遺症で左半身に麻痺を負ったことから「死にたい」と思うようになったことなども報じられている。 女性は「死刑になりたい」と考え、犯行に及んだとされている。被害者は無事だったものの「殺人未遂ではないのか」「なぜ、このような犯行でも執行猶予がつくのか」などの疑問の声もあがっている。 一般的に、執行猶予がつくのは、どのようなケースなのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。 ●殺人未遂罪で「執行猶予をつけることがある」 ーー今回の被告人女性は傷害と銃刀法違反の罪で起訴されていますが、一般的に殺人未遂罪の場合は執行猶予がつく可能性はあるのでしょうか。 「殺人未遂罪の法定刑は『5年以上』の懲役刑などと規定されています。他方で、執行猶予をつけるには『3年以下』の刑罰とする必要があります。したがって、原則として、殺人未遂罪に執行猶予をつけることはできません。 しかし、実際の殺人未遂罪の裁判では、未遂減刑などを適用することで、言い渡す刑罰を3年程度にまで減刑し、執行猶予をつけることがあります。 ただし、簡単ではありません。執行猶予をつけるか否かを決めるにあたっては、行為の危険性(凶器使用の有無、行為の回数など)、結果の大きさ(全治期間や後遺障害の有無など)、示談締結の有無、をはじめとした諸般の事情を総合考慮しているように思われます」 ●なぜ、殺人未遂罪で起訴しなかったのか? ーー逮捕の時点では、殺人未遂の疑いと報じられていました。なぜ、検察官は殺人未遂で起訴しなかったのでしょうか。 「検察官は、原則として、被疑者による犯罪の実行行為が人を死亡させる危険があるか否かによって、殺人未遂罪とするか、傷害罪で起訴するかを決定していると思われます。 もっとも、検察官は『実際に発生した結果の大きさ』と『実行行為によって人が死亡する危険性の大きさ』を基礎とし、その他の諸般の事情も総合考慮した上で、最終的な起訴罪名を決定しているものと考えられます。そのうえで、仮に殺人未遂罪として起訴することも十分に考えられるような事案であったとしても、傷害罪として起訴するに留めるというケースも、事実上多数存在しているものと考えられます。
福岡市の商業施設で2022年7月、男子中学生の首を包丁で刺して全治10日のケガを負わせたとして、傷害などの罪に問われていた女性に対し、福岡地方裁判所は3月15日、懲役2年、保護観察付きの執行猶予5年の判決を言い渡した。
報道によると、女性に軽度の知的障害があること、半身麻痺があること、被害者との示談が成立していることなどから、保護観察付きの執行猶予となったという。さらに、交通事故の後遺症で左半身に麻痺を負ったことから「死にたい」と思うようになったことなども報じられている。
女性は「死刑になりたい」と考え、犯行に及んだとされている。被害者は無事だったものの「殺人未遂ではないのか」「なぜ、このような犯行でも執行猶予がつくのか」などの疑問の声もあがっている。
一般的に、執行猶予がつくのは、どのようなケースなのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。
ーー今回の被告人女性は傷害と銃刀法違反の罪で起訴されていますが、一般的に殺人未遂罪の場合は執行猶予がつく可能性はあるのでしょうか。
「殺人未遂罪の法定刑は『5年以上』の懲役刑などと規定されています。他方で、執行猶予をつけるには『3年以下』の刑罰とする必要があります。したがって、原則として、殺人未遂罪に執行猶予をつけることはできません。
しかし、実際の殺人未遂罪の裁判では、未遂減刑などを適用することで、言い渡す刑罰を3年程度にまで減刑し、執行猶予をつけることがあります。
ただし、簡単ではありません。執行猶予をつけるか否かを決めるにあたっては、行為の危険性(凶器使用の有無、行為の回数など)、結果の大きさ(全治期間や後遺障害の有無など)、示談締結の有無、をはじめとした諸般の事情を総合考慮しているように思われます」
ーー逮捕の時点では、殺人未遂の疑いと報じられていました。なぜ、検察官は殺人未遂で起訴しなかったのでしょうか。
「検察官は、原則として、被疑者による犯罪の実行行為が人を死亡させる危険があるか否かによって、殺人未遂罪とするか、傷害罪で起訴するかを決定していると思われます。
もっとも、検察官は『実際に発生した結果の大きさ』と『実行行為によって人が死亡する危険性の大きさ』を基礎とし、その他の諸般の事情も総合考慮した上で、最終的な起訴罪名を決定しているものと考えられます。そのうえで、仮に殺人未遂罪として起訴することも十分に考えられるような事案であったとしても、傷害罪として起訴するに留めるというケースも、事実上多数存在しているものと考えられます。