鳥取大教授、犬猫用の未承認薬1本1万5000円で全国の動物病院に…「違法販売の恐れ」

鳥取大農学部共同獣医学科の男性教授が、犬猫用がん治療薬の「臨床研究」で、2021年度までの8年間に全国の延べ791の動物病院に未承認の試薬を有償で提供していたことがわかった。多数の病院で長期間に及ぶ上、一部からは研究に必要な症例報告書を集めておらず、学内外から不適切との指摘が出ている。
農林水産省によると、研究では未承認でも飼い主の同意で投与できるが、不特定多数に反復継続して提供すると未承認薬の販売として医薬品医療機器法(薬機法)に抵触する可能性がある。農水省畜水産安全管理課は読売新聞の取材に対し、「事実であれば、薬機法が禁じる未承認薬の販売にあたる恐れがある」とする。動物用医薬品の臨床研究は届け出などのルールがなく、農水省は未把握だった。
男性教授は「治療薬開発のためにやっていた。試薬の効果も出ていた」と説明。「臨床研究自体は問題なかったが、報告書の回収が不十分だった。法律に関して素人で、結果として有償の未承認薬提供になった」と話した。研究は終了した。
鳥取大と千葉大、医療機器メーカー3社が2013年に共同事業体を設立し、千葉大提供の製剤から男性教授が試薬を作製し、動物病院に有償(1本1万5000円)で提供していた。

動物用医薬品は、治験(臨床試験)の結果などから、有効性や安全性が認められると農水省が承認し、製造・販売できる。治験は農水省に事前の届け出が必要だが、前段階の臨床研究では届け出は不要。人間用の場合に臨床研究法が定める国への届け出などのルールも動物用は対象外だ。
鳥取大の説明では、14~21年度で全国の延べ791の動物病院が提供を受けた。記録が確認できる17年度以降は同大農学部の口座に年1033万~1999万円の入金があり、21年度までの5年間の合計は7887万円。千葉大に支払う製剤費用を除いて、主に男性教授の研究で使われた。
20年に鳥取大内部で研究のあり方が問題となり、大学が調査。研究には試薬の効果や副作用、治療経過に関するデータが不可欠だが、症例報告書が一部の病院から提出されていなかった上、製造・販売する製薬会社を確保するめどが立たず、薬事承認の具体的な見通しがないことがわかった。
臨床研究は21年3月末で終了。投与途中の一部の動物病院には約半年間、試薬提供を続けた。大きな副作用の報告はなく、入金の私的流用もなかったという。
鳥取大は取材に対し、「研究成果がバックされていないのは確かで、全体の仕組みに問題があったのは否めない」としている。千葉大は「技術提供のみで、鳥取大を信用して契約していた」とした。