ニュース裏表 田中秀臣 岸田政権、総額2兆円の物価対策では効果は限定的 財務省に負けずさらなる積極財政を

岸田文雄政権の動きが活発化している。外交面では、日韓関係の「改善」や、ウクライナへの電撃訪問などがその象徴だ。外交はテレビ映えもするため、内閣支持率の上昇をもたらしている。
さらに経済対策も「物価高対策」として予備費を利用した総額2兆円の政府支出を決めた。「検討使」と批判されてきた岸田首相にしては決断が早い。理由は簡単で、4月の統一地方選向けの対策だ。
政治家が国民の歓心を呼ぶために、積極的な財政政策を打ち出すことをポピュリズム(大衆迎合主義)と批判する風潮が日本にはある。だが不況の時に景気刺激政策を打ち出すことは、国民の利益になるので、この種の大衆迎合批判は間違っている。おそらく財務省が数十年かけて「日本は財政危機だ」「将来世代の負担になるような国債発行を控えるべきだ」としてきた〝洗脳〟の結果だろう。
経済全体が不振な時に政府が積極的な財政政策を行うことは、先進国の常識である。財務省の宣伝よりも先進国の常識がもっと広まるべきだろう。余談だが、数年前に高校生のボランティア団体のイベントに参加したときに、国会議員が財務省のパンフレットを配布して、財政危機を煽(あお)っていたのを目撃した。すぐに私は反論して、その種の工作を邪魔したことがある。いずれにせよ、財務省の〝洗脳〟が若者にも及んでいることは恐ろしい。
物価高政策2兆円は、2022年度の予備費の残高である6兆円を利用するものだ。再エネ賦課金を引き下げることで、電気代の負担が一般家庭で月800円程度下がる。またガス料金も引き下げる。低所得世帯に3万円の給付金、また低所得世帯の子供1人当たりに5万円の給付なども行われる。電気・ガス代の負担軽減や低所得世帯対策は必要な対策だ。
ただし日本経済全体のおカネの不足が20兆円近くなので、総額2兆円では効果は限定的になる。
第一生命経済研究所のエコノミスト、星野卓也氏が指摘しているが、予備費をそれなりに残し、防衛費増額の「財源」に充てる必要が政府・財務省にある。当初予算での国債発行を避けるためだ。だが、いまの日本で国債を発行して景気対策や防衛費増額に充てても国民は誰も困らない。
まるで家計をやりくりするように国の予算を考えるのは間違いだ。世界経済の先行きを考えれば、もっと規模の大きい補正予算も早急に打ち立てるべき時だ。しかし統一地方選対策とすれば、これで打ち止めになりかねないのが、今の岸田政権の問題である。 (上武大学教授)