岡山市は2025年4月の開校を目指す市立夜間中学校の入学時期について、これまで4、10月の2回としてきた方針を、随時可能と転換した。一般社団法人「岡山に夜間中学校をつくる会」(同市北区)の「入学希望者はさまざまな事情を抱える。ニーズに応えてほしい」との要望を受け入れた。城之内庸仁(しろのうち・のぶひと)代表理事(46)は「大きな前進」と喜ぶ。
13日、市役所を訪れた城之内さんらは、大森雅夫市長、三宅泰司教育長に、夜間中学校設置の基本方針策定に向け、要望書を手渡した。中でも、強く訴えたのは随時入学だった。
城之内さんが説明する。「関心を持った人が、ちょっとしたことから尻込みをして、入学を断念するケースがある。4~10月の随時応募として、広く学ぶ機会を与えるべきだ」。その後の懇談で、大森市長は「教育委員会とも議論した結果、随時入学可能と変更する」と応じた。
つくる会は、在籍年数を6年から義務教育と同じ9年に延長することも要望。市は6年を基本とする方針を変更しないものの、大森市長は「事情に応じて、柔軟に対応したい」と返答した。
夜間中学校は、第二次世界大戦後の混乱期に小中学校へ通えなかった高齢者、不登校経験を持つ人らに「学び直し」の機会を提供する。文部科学省は都道府県、政令市に少なくとも1校の公立夜間中の設置を求めているが、岡山にはない。文科省のデータでは、22年度時点で公立夜間中は15都道府県に40校ある。
つくる会は17年、岡山市内に「岡山自主夜間中学校」を開設。登録生徒数は約330人で、約280人のボランティアスタッフで運営するが、週3回の授業が「限界」でもある。城之内さんは「もっと学びたいという生徒は多く、公立への期待は大きい。公立と自主が『車の両輪』になるのが理想」と語る。
この日は、同校の生徒3人も同行した。岡山市北区の赤木祥人(よしと)さん(55)は、中学2年の時に「精神的な病から不登校になった」という。「先生の言うことが全く理解できず、つらくなった。その後、就職して『挙手してください』という言葉の意味が分からず、恥ずかしかった。自主夜間中学校で、学ぶことの喜びを知った。公立ができれば、毎日通いたい」と訴えた。
生徒最年長の槙本早栄子さん(87)=同区=は「学校は楽しい」と大声。大森市長、城之内さんからも、笑みがこぼれた。【堤浩一郎】