松江城を囲む堀川一帯や宍道湖で夏場に水草が大量繁茂し、景観を損なったり悪臭を放ったりしてやっかいな存在になっている。一方、この難物の回収に挑むことでビジネスチャンスを広げつつある松江市の企業2社を紹介する。【鈴木周】
水面に浮かぶ水草が目立ち始めた今年7月上旬。北公園(松江市学園南1)を流れる京橋川には、水草を刈り取っては岸に積み上げる藻刈り船「浮き丸」の姿があった。長さ4・7メートル、幅2・1メートルの船を所有するのは船舶整備を手掛ける「大新」(同市八幡町)。浮き丸はベルト状の推進装置を持ち、浅瀬だけでなく陸上でも働ける。昨年5月は埼玉県内の漕艇(そうてい)場で、今年1月には滋賀県内の湖でも回収作業に当たった。浮き丸はトラックに乗せて運ばれ、月に1、2回は全国各地に出向く。
従業員14人の同社が水草の刈り取り事業を本格化させたのは約5年前だ。県内での繁茂が話題になる中、大築武司社長は「温暖化もある。繁茂は全国的な問題ではないか」と推測してスウェーデンの企業から浮き丸を購入、宍道湖などでの回収作業をホームページに掲載すると、出動依頼が相次いだ。今では藻刈りの作業料が売上の一定割合を占めるまでになった。大築社長は「今後は藻刈り船の販売から保守、点検まで一括してできれば理想的」と意気込む。
独自に船を設計して売り込むのは、農機の設計を手掛ける「菱農エンジニアリング」(松江市東出雲町揖屋)。松江市からの依頼をきっかけに2014年はじめごろから藻刈り専用船の開発に着手し、約1年後に完成させた。
長さ約6・3メートルの船は幅を2・1メートル、さらに水面から1・2メートルの橋の下を通過できる高さに抑えるなど狭い場所で動けるのが強み。今年6月上旬からの松江城周辺での回収作業でも活躍した。
同社も船を開発後にホームページで紹介し、各地の自治体などから数十件の問い合わせを受けたが、販売までは至らなかった。そこで製品紹介のDVDを自治体など500カ所以上に送り、動画投稿サイト「ユーチューブ」にも回収作業の様子をアップ。顧客の要望に応じて仕様を微調整できる点もPRした。
その結果、同社は2017年4月に岡山県倉敷市に藻刈り船を販売し、今年8月には山形県南陽市の白竜湖(はくりゅうこ)では刈り取り作業を請け負った。更に長崎県島原市と今年10月からのリース契約も結んだ。小松原浩社長は「生活者への直接的な影響が小さい水草とはいえ、処理を求める声は多い。ニーズをくみ取り、事業を拡大させたい」と話す。