自転車のヘルメット着用、努力義務化始まる 促進へ自治体も試行錯誤

改正道路交通法が1日に施行され、自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務化された。自転車用品販売店などではヘルメットの販売が急増する一方、街頭では「髪形が乱れるのでかぶりたくない」という声なども聞かれた。
東京都世田谷区の小田急線経堂駅前ではこの日、警視庁北沢署員と小学生有志による「交通少年団」8人が、道行く人にティッシュなどを配りながらヘルメット着用を呼びかけた。
経堂駅前では、ヘルメットをかぶる子どもたちの姿は多く見られたものの、着用している大人はごくわずか。ヘルメットをかぶらず自転車で走行していた同区の主婦(42)は「3歳と6歳の子どもは別だが、自分は荷物になるし買うのも手間ですね」と渋い顔を見せた。「あった方が安全なのは分かっているが買わないと思う」。別の若い男性も「ヘルメット着用は小さい頃までというイメージ。自分はかぶらない」と強調した。
一方、2カ月前にテレビのニュースで着用の努力義務化を知り、すぐに購入して着用しているという同区の近藤直子さん(78)は「ほぼ毎日自転車に乗るので転んだりする危険を考えると頭は守りたい」と話していた。

これまで13歳未満の子どもについてはヘルメットを着用させる努力義務がその保護者に課せられていたが、今回の改正道交法の施行で、すべての自転車利用者に拡大された。努力義務のため罰則はないが、警察当局は未着用者に声掛けなどを積極的に行う方針だ。
努力義務を拡大した背景には、自転車乗車中の事故で亡くなった人の死因の6割が、頭部外傷であることなどが挙げられる。警察庁によると、2022年に発生した自転車事故で乗用者が死亡したのは全国で336人。そのうちヘルメットを着用していなかった人の致死率は着用者の2・6倍だった。
改正法施行に伴い、ヘルメットの売り上げも急増している。
全国展開する自転車販売店「サイクルベースあさひ」では、2月上旬ごろからヘルメットの販売が伸び始め、売り上げは前年比2倍以上に増加。全国の各店舗で売り場を増やしたり、法改正を知らせるポップを設置したりしているという。
着用促進のため、自治体も知恵を絞る。東京都足立区は3月から区民を対象に、対象店舗で安全基準を満たした3000円以上のヘルメットを購入した場合に2000円の補助を始めた。
しかし、着用がどこまで浸透するかは不透明だ。
警視庁の担当者は「ヘルメットをかぶることで助かる命もある。着用率向上に向け啓発に力を入れていきたい」と話している。【高井瞳、南茂芽育】