広島県三原市の離島「佐木島」が熱い。2月にフルマラソン大会が開かれたのに続き、今夏は大規模なスポーツイベントが相次ぎ開催される。過疎が進む瀬戸内の島は「スポーツの島」をアピールし、活性化や経済効果に期待している。
自転車のプロ選手が競う国内最高峰のロードレースが7月8日、佐木島の海岸線を走る周回コース(10・5キロ)で初めて開催されることが決まった。8チーム(1チーム6人)以上が島に渡り、コースを周回してチームワークを競う予定だ。
主催するジャパンサイクルリーグは、まず国内レースとして実績をつくり、将来は国際レースへの昇格を目指すとしている。自転車を通じた地域活性化を掲げており、片山右京チェアマンは「ライブ配信を通じて世界中に佐木島を知ってもらうチャンス」と開催の意義を強調する。今大会は約3000人の観衆を見込んでおり、経済効果に期待される。
このロードレース大会はトライアスロンで実績のあるコースを使う。「トライアスロンさぎしま大会」は1990年に始まり、数々のドラマを生んできた伝統のスポーツイベントだ。この積み重ねから佐木島は「トライアスロンの島」として広く知られるようになった。
島最大のこのイベントも、新型コロナウイルスの感染拡大には勝てず、2020年から3年連続で開催は見送りに。総出で大会を盛り上げてきた島民は再開を強く望み、今年8月20日に復活することが決まった。島を一周するコースや海水浴場を使い、個人400人と団体40チーム(120人)がバイクやラン、スイムで熱い戦いを繰り広げる。
第1回から運営を支援してきた「さぎしまを愛するボランティアガイド」の土田美千恵さん(76)は「3年間さみしい思いをしていた。ワクワクしている」と歓迎。「根強いファンが多く、開催を待ち望んでいた選手も多いはず。島を訪れるリピーターが増えるよう、観客も熱く歓迎したい」と意気込む。
2月5日に開かれたフルマラソンは、元プロ野球選手を含む約350人が島民の声援を受けながら周回コースを走り、島民と交流を楽しんだ。
佐木島は三原港から高速船で13分。約600人が暮らし、野菜や柑橘栽培が盛んな周囲約12キロの離島だ。静かな瀬戸内に浮かび、映画「裸の島」の舞台となった宿祢島など多島美が眺められる。美しい自然が残る環境が著名ホテル経営者の目に留まり、富裕層向けのホテル進出も決まった。開業は25年を見込む。
島は平均年齢68歳と少子高齢化が進む。ホテルを誘致した岡田吉弘市長は「島活性化のチャンス。富裕層のハートをつかみ、振興につなげたい」と期待している。【渕脇直樹】