福島の復興拠点外、27%が帰還意向 政府調査、大筋で判明

東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の帰還困難区域のうち、避難指示が出たままの地域への帰還の意向を尋ねた政府による調査結果の概要が判明した。除染やインフラ復旧を優先して進める特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域に住んでいた2002世帯のうち535世帯(27%)が、帰還の意向はあると回答した。
調査の対象は、帰還困難区域のうち、除染で集められた汚染土などを保管する「中間貯蔵施設」と復興拠点を除く「復興拠点外」と呼ばれる地域。政府は従来のように地域の一帯を除染するのではなく、帰還の意向を示した人の家や生活道路など範囲を限って除染し、2029年までに避難指示を解く方針だ。調査はその最初の段階になる。
帰還困難区域は7市町村の337平方キロに設けられ、東日本大震災当時は約2万7000人が暮らしていた。復興拠点はこのうち6町村の約27・5平方キロだが、人口が密集し、計約1万6000人が住んでいた。一方で「復興拠点外」は7市町村の約290平方キロで、計約8000人が住んでいた。面積が帰還困難区域の8割超、人口が3割に相当する。
調査は政府が自治体と準備し、世帯ごとに発送する。各世帯は帰還の意向について「有」「無」「保留」を選ぶ。対象は7市町村約2020世帯で、うち4町2002世帯の結果が3日までに判明した。各町によると、大熊町597世帯中141世帯▽双葉町410世帯中92世帯▽浪江町757世帯中225世帯▽富岡町238世帯中77世帯――で帰還の意向を「有」と回答した。残る南相馬、飯舘、葛尾の3市村の対象は計約15世帯で、政府と各自治体が今後確認する。
政府が示した方針では、復興拠点外の除染は地域を全体的にではなく、まだら状に行われることになる。回答に悩んだ世帯は少なくなく、大熊町の女性(46)は「小さな子を呼べない」、浪江町の男性(73)は「高齢者が山奥に1人で戻っても……」と語った。「先祖代々の土地は(除染で)きれいにしてほしい」との考えから、帰還の意向はあるとした世帯も存在する。
昨年6~8月に避難指示が解除された3町村の復興拠点では、居住人口は計100人程度で、住民登録の1%程度。今回、帰還の意向を示した世帯がどれだけ戻るのかは見通せない。
福島大の川崎興太教授(都市計画)は「原発事故の最大の被害は人間関係や生きがいといった日常の喪失であり、個人宅の除染や避難指示解除は被害の回復の第一歩に過ぎない。国や自治体は少数でも帰る人の生活をしっかり支える必要がある」と話す。【尾崎修二】