海上自衛官自殺、両親が国を提訴 「長時間労働やパワハラ対策怠る」

海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)を母港とする護衛艦「あけぼの」の艦内で2021年2月に海士長だった西山大弥(ひろや)さん(当時20歳)が自殺したのは、海自が長時間労働やパワーハラスメントを防ぐなどの対応を怠ったためだとして、西山さんの両親が国に計約7800万円の損害賠償を求める訴訟を長崎地裁大村支部に起こした。
西山さんは19年4月、海自に入隊。同10月から、あけぼのの船務科に所属していた。
訴状によると、西山さんは19歳だった20年9月ごろ、自身を含め複数の未成年の隊員で飲酒したが、西山さんのみが10月以降、「自己反省ノート」を毎日作成するなどの指導を受けた。また、上官から「真に反省している」などと評価されなければ、無期限で上陸が禁止されるペナルティーを受けた。
亡くなる前日の21年2月9日、西山さんは同僚に頼まれ、米軍佐世保基地内のファストフード店で買い物をし帰艦。同日午後8時ごろ、複数の上官から「米軍基地内のファストフード店での買い物は禁止されている」などと厳しく叱責された。両親側はこの時の叱責について「上官らの声が艦内に響くほど、相当きつかった」と主張している。
翌10日早朝、西山さんは艦内の空調室内で自殺しているのが見つかった。22年6月には精神疾患の「うつ病エピソード」を発症し、命を絶ったとして公務災害認定を受けた。
その際、父賢二さん(48)=同県川棚町=は海自関係者から、西山さんの自殺が「長時間の時間外労働に起因する」などと説明を受けたが、公務災害認定に関する資料は開示されず、具体的な労働時間は把握できていないという。
賢二さんは毎日新聞の取材に「温厚で我慢強い息子が、なぜ命を絶つまで追い込まれたのか。真実を明らかにしたい」と訴えた。
一方、海自佐世保地方総監部の担当者は取材に「21年2月10日にあけぼの内で自殺があったことは事実だが、本人や家族のプライバシーにかかわるため、詳細は差し控える」と述べた。【松本美緒】
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