《虐待音声》1歳児に「泣けばいいと思ってんじゃねーよ、この野郎!」都内保育施設虐待 恐怖の“お叱りベッド”も から続く
前編 では、東京・足立区の認可外保育施設(ベビーホテル)「X」で臨時職員として働くR子さんが、施設で日常的に行われている虐待行為について告発した。
「X」では介助者なしに暗い部屋で1歳半前後の幼児をひとりで食事させる、泣き止まない幼児を“お叱りベッド”に入れて長時間放置したりする、厚紙製のバインダーで幼児の頭をはたくなど、重大な事故に繋がりかねない行為が日常的に繰り返されていたという。
2019年6月11日、R子さんはこのような行為を足立児童相談所に通報した。その2日後の6月13日、東京都福祉保健局の保育施設検査担当の職員が「X」に調査に来ている。R子さんが語る。
「全職員にアンケートが配られ、個別のヒアリングが2日かけて行われました。私も都職員の方3人に、1時間虐待の詳細を説明しています。ほかのパートの方も、同じように虐待について訴えたようです」
6月27日、都は立ち入り調査についての結果を「X」に通知している。そこには具体的な問題行為とともに、《児童の人権に対する十分な配慮に欠けているので是正すること》と明記されている。その下にはA園長の筆跡で、都の担当者から《十分に改善を期待できるし、よりよい園づくりをしてもらえると内部会議で話が出た》と言われたと書かれている。
7月8日、「X」は都へ改善状況報告書を提出している。そこには調査時に指摘された内容に対し、《子どもへの接し方を見直していく》などの対応策がA園長の筆跡で記されていた。
しかしそれから約2カ月、虐待行為は改善されることなく続いたという。
「AさんやBさんも少しは反省してくれたのではないかと思っていたのですが、調査が終わって始まったのは“犯人探し”。AさんとBさんは『●●ちゃんの保護者が怪しい』などと話し合っていました。気に入らないことをした子に対して『また私たちが通報されるからやめてよ~!』とふざけて言っていたこともありました」(同前)
実際、 前編 で報じた虐待行為の多くは、立ち入り調査後の2カ月間に起きている。
取材班は虐待の事実についてA園長を直撃した。虐待行為については否定し、「感情的になってしまうときもある」と主張した。
――「X」で虐待があると情報提供があった。“お叱りベッド”を知っているか。
「私が把握している限りでは、聞いていないです」
――保育士Bが主に“お叱りベッド”を使っている。
「暴力的だったり自分の感情をコントロールできない子がいる場合は、ベッドに入れましたと保護者の方に報告することはあります。そばには保育者がついていると聞いているので。子供を一人にしていて何時間も忘れたとかは聞いていた話と違いますし、(記者から)聞かれて戸惑っているというところはあります」
――バインダーで叩くなどの暴力行為があったとも聞いている。
「私が見ている範囲ではないです」
――食事を無理に幼児の口へ詰め込んだり、一人で食事させるなどの行為はあるか。
「詰め込んだりとかはないと思いますよ。一人で食べさせることはあります。というのは、職員体制が正直整っていないので、一人にしなければいけない時間がある。食事をしている子、睡眠をとる子がいるので、一人でも食べられるかな、という子は(食べさせる)。それが0歳児とかなら別ですけれど」
――子供にあだ名をつけることはある?
「ないとは言い切れないです。保護者の方が聞いたらどう思うかは別として、園児の中で流行らせようとかは思っていないですし、それが相手にどうとられるかは別として、ちょっと似てるよねとか、別に傷つけたいとか嫌味で言っているわけではないですけれど、そういうのはあると思います」
――職員からも虐待だと指摘を受けることはあったか?
「ありますね。ちょっとやりすぎなんじゃないというのは辞めた職員から言われているので、『改善するように努力します』というふうに」
――都の立ち入り調査から改善されていないという話もある。
「私たちも人間といいますか、感情的になってしまうときは、私も園長としてもありますし、Bもあるだろうし。保育士としてもう一回働き方を見直しましょうというのは保育者全員とお話をして、改善をしていこうというところでした」
A園長への取材後、社長のC氏にも電話で直撃した。すると虐待については「報告書には書かれていなかった」と繰り返し主張した。
――虐待について認識していた?
「東京都の偵察(立ち入り調査)があったんですけれど、(報告書には)虐待というふうには書かれていないんですよね。虐待っていう認識はない。(“お叱りベッド”の存在は)知らないですね。そこまではやってないと思うんですよ。そんな報告も受けていないんで。東京都の報告書を見ているだけなんで」
――現場のことは書類のみで把握している?
「私は、はい、そんな感じで見てます」
――バインダーで子供を叩いたこともあったが。
「それは(報告書には)書いてなかったな」
――バインダーの一件は立ち入り調査後に起こっている。
「それはどこから? 俺よりも詳しい情報ってどこから入ってくるんですか? 私はそういう報告は受けていないんですよ。日常の連絡帳にも報告書にもそこは出ていないですね。東京都が入った6月以降もそういったこと(報告)は出ていないですね。それはちょっと不確定だな」
――防犯カメラを見ていても虐待に気づかなかった?
「映っていないんですよ。なので東京都が入ったときにびっくりして話をしたくらいなので。死角があるじゃないですか、どうしても」
――防犯カメラには園内の何が映っている?
「全体的に映っています」
――死角で虐待が行われていたと。
「トイレとかに連れていくとかですかね、じゃあ」
――ベビーベッドに子供を入れるとか、食堂で電気を消していた様子は映っていたのではないか?
「映ってますね」
――どのくらいの頻度で防犯カメラを見ていた?
「1日最低4回です。子供を預けてくれるとき、子供が遊んでいる午前10時前後、就寝しているとき1回必ず見て、あとは園を出る時ですかね。細かく見ているつもりだったんですけれど、一日中見ているわけではないので」
――社長は園内に入らないのか?
「私は園に一日張り付く気は全然ないので」
東京都の保育支援課にも事実確認をしたところ、以下の回答があった。
「7月16日に施設から改善状況報告を受け、その改善状況を進めていたところ、8月30日に通報者から情報提供があり、いまだ改善が不十分であることが伺える内容であったことから、9月3日に施設に対し再度指導を行い、現在も改善に向けた指導を継続しているところです」
保育ジャーナリストの猪熊弘子氏が語る。
「今年10月から幼児教育・保育が無償化されます。問題は国の基準を満たしていない認可外保育施設も対象になることなんです。そうなると経験不足の事業者が増え、利益重視で保育の質を度外視した運営が行われる危険性が高まります。無償化するのであれば国による監督指導は徹底しなければいけないのですが、現在の行政の体制でできるとは思えない」
一方で猪熊氏は「どんな保育施設であっても、預けざるを得ない事情を抱えた人もいる」と続ける。
「だから保育園が増えることはとてもいいことです。ただ、国が度を超えた規制緩和をしたことで、保育の質が担保されない保育園も急増してしまった。その結果、保育の現場ではすでに崩壊とも言える状況が起きている。このままだと、犠牲になる子供たちは増えていく一方です」
(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)