女川に「サンマの秋」いまだ来ず 市場の社長「海がきれい過ぎる」

宮城県女川町に“秋”が来ない。全国屈指のサンマ水揚げ量を誇ってきた女川港に、今年はまだ初水揚げがない。平成の約30年間で最も遅かった一昨年の9月20日も過ぎ、令和最初は10月に入る情勢だ。サンマの炭火焼きなどを振る舞う「おながわ秋刀魚(さんま)収獲祭」は予定通り29日に開催するが、昨季の冷凍ものを味わいながら旬のサンマを待つことになりそうだ。【百武信幸】
「今は連絡を待つしかないが、10月になるだろうな」と女川魚市場の加藤実社長(69)は嘆く。昨年の初水揚げは8月28日で、すでに約1カ月遅れ。昨年の年間水揚げ量は約1万5000トンで、初水揚げが遅かった2017年の約9000トンこそ上回ったが、震災前の4万トン超の水準には遠く及ばない。震災後の水揚げは2万トン前後で続いており、回復の兆しも見えない。
背景には、海流の変化や海水温の上昇などが指摘されている。加藤社長も「海がきれい過ぎる」と言う。「かつては女川の海もロープが引けないぐらいぬるぬるだった。きれいなのはエサとなるプランクトンがいないためだろう」。サンマに限らず、サバやカツオなどあらゆる魚種が不漁続きの現状を危惧する。
サンマ漁は今年5月から通年操業が解禁された。女川の買い受け人は、脂のりなど質が見通せず、春夏の受け入れは見送ったが、石巻から出漁した大型船は不漁で赤字だったという。いいニュースがない中で「このまま不漁が続けばサンマを待つ女川の水産加工業や商店街にも影響する。遅れた分、後ろ(漁の終わり)も長引いてくれればいいが」と好転に望みを託す。
秋の風物詩、「おながわ秋刀魚収獲祭」も近年思うように開催できていない。全国的な不漁の中、一昨年は他県からサンマをかき集め、昨年は台風で縮小開催。今年は冷凍もので炭火焼き1万匹とつみれ汁4000杯を無料(海難事故遺児や被災者支援への募金制)で振る舞うことに決めた。祭りの実行委員長でマルキチ阿部商店の阿部淳社長(45)は「水揚げはぎりぎりまで待ちたいが、冷凍サンマでも女川にはおいしく食べてもらえる品質と技術があることを示せたら」と話している。