昭和41年に静岡県の一家4人が殺害された事件で死刑が確定後、釈放された袴田巌さん(87)の再審公判で、検察当局が新たに有罪立証をしない方向で検討していることが7日、関係者への取材で分かった。静岡地裁で今後予定されている再審公判で、無罪判決が早期に言い渡される可能性が高くなった。
袴田さんを巡っては今年3月13日、東京高裁が差し戻し審で再審開始を認め、東京高検が最高裁に不服を申し立てる特別抗告を断念し再審開始が確定。4月10日には再審公判の進行などについて静岡地裁、静岡地検、弁護団による初の3者協議が行われる予定で、早ければこの協議で地検が立証方針を示す見込み。
差し戻し審での争点は、事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクから見つかり、確定判決で犯行時の着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕の変色状況だった。
高裁は、衣類を「事件の中心的な証拠」とし、1年以上みそに漬けられた衣類の血痕は黒色などに変わるとした弁護側の主張を認め、再審開始を決めた。この決定では衣類が捜査機関に捏造(ねつぞう)された可能性にも触れていたことから、検察当局には反発もあった。
再審では当初の確定判決までに提出されていた証拠と、再審請求の際に提出された新たな証拠を合わせて審理する。関係者によると、検察当局は、争点が衣類の血痕の変色状況の1点に絞られていた状況で特別抗告を断念している上、衣類以外の証拠から袴田さんの有罪立証を続けることは困難と判断しているもようだ。
一方、弁護団によると、弁護側は袴田さんが高齢であることを踏まえ、再審公判では袴田さんに対する被告人質問や、新たな証人尋問は行わず、早期の結審を訴える方針という。