「技能実習制度の廃止」を提示、有識者会議「労働者として受け入れ続けるのは望ましくない」

外国人の人材育成による国際貢献を目的とした「技能実習制度」のあり方を検討する政府の有識者会議は10日午前、法務省内で会合を開き、現行制度の廃止を検討するよう求める中間報告書の原案を示した。代わりに、「人材確保」と「人材育成」を目的とする新制度の創設を促した。
少子高齢化で人手不足が深刻化し、外国人の実習生が労働力の貴重な担い手となっている実態に合わせる必要があると判断した。政府は有識者会議が今秋をめどにまとめる最終報告書を踏まえ、早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。技能実習制度は1993年、途上国への技術移転という国際貢献策として始まったが、大きな転換点を迎えることになる。
原案では、「制度目的と運用実態の 乖離 (かいり)」を挙げて「人材育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受け入れを続けることは望ましくない」と指摘し、新制度の必要性を訴えた。
新たな制度については、人手不足の分野で外国人の労働が認められる在留資格「特定技能」の制度と連動させ、「対象職種や分野を一致させる方向」で検討するよう求めた。外国人労働者が特定技能に移行しやすくし、国内で「中長期的に活躍できる制度の構築」を図る狙いがある。
技能実習生の受け入れ先の企業に対する監督などを行う「監理団体」については存続させる一方、不適切な就労を放置するなど悪質な団体を排除するため、認定要件の厳格化を求めた。
現行制度は、実習生が同じ職種の企業に移る「転籍」を原則認めていないため、悪質な雇用主から逃れられず、人権侵害を助長しているとの指摘もある。こうした批判を踏まえ、新制度では、転籍制限を「従来よりも緩和する方向」で検討するべきだとした。
◆技能実習制度=発展途上国の外国人が日本で働きながら技術を学び、帰国後に母国の発展に生かしてもらうことを目的として創設された。実習期間は最長5年間で、3月末時点で農漁業や縫製業、建設業など87職種が対象。受け入れ数は、昨年6月末時点で約33万人。

外国人労働者に「選ばれる国」となれるか

政府の有識者会議が技能実習制度の廃止に踏み込んだのは、少子高齢化による労働力人口の減少により、外国人技能実習生が農業や介護など人手が集まりにくい業界にとって欠かせない存在となっているためだ。背景には、外国人労働者に「選ばれる国」となれるかどうかの瀬戸際にあるとの危機感がある。
実習生に対する賃金不払いや職場の暴力などは後を絶たない。失踪する実習生は、2021年で約7000人に上っている。意欲のある外国人労働者が安心して働けるよう、早急に制度を改めなければならない。
技能実習生の在留期間は最長5年間だが、中間報告書案では、新制度で長期滞在が可能な在留資格「特定技能」への移行を円滑にすることも促した。
政府は「移民政策はとらない」との方針だ。新制度では、政府方針との整合性や国の将来像を見据えた丁寧な説明が求められる。(政治部 植村信介)