マウスピースを使った歯列矯正治療が実質無料で受けられるとうたいながら高額の治療費を支払わされたとして、治療を受けた女性らが11日、医療法人社団「デンタルオフィスX」や関連会社の幹部ら5人について詐欺容疑などで警視庁に告訴状を提出した。
デンタルオフィスXを巡っては、モニターになって治療前後の写真の公開に同意し、イベントの集客に協力するなどすれば「治療費と同額の報酬を支払う」という趣旨の契約を結んで治療費を先払いしたものの、報酬の未払いが続いているとして、治療を受けた153人が今年1月、計約2億円の損害賠償を求めて東京地裁に集団提訴している。
被害者の代理人を務める加藤博太郎弁護士によると、デンタルオフィスXは東京、福岡、京都の3都府県にクリニック4店舗を展開。2019年5月以降、若い女性を中心に1700人以上から治療費として総額20億円超を集めていたとみられる。報酬の支払いは22年3月から停止していたが、その後も新規モニターを勧誘していた。クリニックは一部閉鎖しており、治療途中の人も多い。歯が抜けたり、かみ合わせが悪化したりするなどの健康被害も確認されているという。
告訴状などによると、デンタルオフィスXは21年5月~22年2月、資金不足で報酬の支払い能力がないにもかかわらず、「治療モニターになれば報酬を支払う」などとうたい都内の女性3人を勧誘し、東京・銀座のクリニックと治療契約を結ばせ、それぞれから治療費として187万円を詐取したとしている。
女性らは11日、都内で記者会見し、「かみ合わせもあわないまま放置されている。被害者に謝罪してほしい」と訴えた。
クリニックの運営会社「グランシールド」(東京都中央区)の代理人弁護士は「捜査に関することなのでコメントは差し控える」としている。
コロナ禍便乗し勧誘か 症状は悪化
「治療費は実質無料。マスクを着けているコロナ禍なら、目立たずに治療できますよ」
デンタルオフィスXの幹部らについて告訴状を出した東京都の会社員女性(30)は2021年5月、インスタグラムで歯科衛生士を名乗る人物から突然、マウスピース矯正のモニターの誘いを受けた。治療前後の写真を宣伝や研究に使用する代わりに、クリニックから治療費と同額の報酬が支払われる仕組みだった。
学生時代から八重歯や、歯の隙間(すきま)がコンプレックスだったという女性。「有名人も担当している医師が治療計画を作ってくれる」などという言葉に安心し、同年7月にモニター契約を結び、187万円のローンを組んだ。
東京・銀座のクリニックで歯型などが取られ、後日、自宅に届いた大量のマウスピースを指示された順番で付け替えていった。経過確認で2カ月に1度クリニックを訪れ、歯科衛生士が口内を確認した。契約通り、毎月のローン返済額と同額が報酬として振り込まれていた。
しかし、22年3月、報酬の支払いが突然停止した。クリニックを問いただすと関連会社を通じて「ウクライナ問題などで海外口座からの送金取引が停止している」「契約書が偽造されていて報酬を支払えない」などと説明されただけだった。
通っていたクリニックは閉鎖され、手元には130万円のローンが残った。マウスピースを言われるがままに装着していたが、あごがずれて奥歯でかむことができない。出っ歯になった気もした。慌てて別の歯科医院に駆け込むと「(矯正により)悪化している」と指摘された。
「今年は結婚式を予定していたけど、こんな歯並びで写真を撮りたくない。治療し直すにも、お金も時間も奪われてしまった。人生の計画が崩れました」【高井瞳】