なぜ、人々はうんこにひき付けられるのか うんこミュージアムの魅力に迫る

「臭い」「トイレみたいな臭いがする」――。8月、2020年に開催される東京オリンピックで、オープンウォータースイミングの会場となるお台場で同競技のテスト大会が行われた。水面には茶色の泡が浮かんでいたともされ、後日開催されたトライアスロンのテスト大会では、水質悪化を理由にスイムが中止。現在は東京都を中心に水質改善の取り組みが進んでいるが、オリンピックの会場がからトイレの臭いがするとして大きな話題となった。

時を同じくして8月、お台場にうんこの一大拠点がオープンした。その名も「うんこミュージアムTOKYO」。「面白法人」として知られるカヤック(神奈川県鎌倉市)と、アカツキライブエンターテインメント(東京都品川区)が手掛けるエンタメ施設だ。両社は3月に「うんこミュージアムYOKOHAMA」を開設。当初は7月までとしていたが好評だったため9月末まで延長した。担当者によると、来場者はオープンから4カ月半で20万人を超え、計画していた数の2倍以上を動員している。

なぜ、人々はうんこに引き付けられるのか。また、場内では何が起こっているのか。実際にうんこミュージアムに行って体験してみた。

「場内には本物のトイレはありません」
うんこミュージアムTOKYOは、複合商業施設「ダイバーシティ東京」の2階に陣取っている。休日なこともあり、ダイバーシティは家族連れやカップルなどで混雑していた。その中でも、数人が行列をなしていたり、写真を撮る一団がいたりとひときわ目立つ一角に足を運ぶと、うんこミュージアムだった。当日販売のチケットもあるが、事前に購入する場合には入場時間を指定する必要がある。料金は、事前予約の場合大人(中学生以上)が1600円(税込、以下同)、子ども(小学生)が900円。当日販売は、大人が1800円、子どもが1000円。ともに小学生未満は無料だ。

入場しようとチケットをスタッフに提示したところ、第一声は「場内に本物のトイレはありませんが、大丈夫ですか?」だった。うんこをメインにしたミュージアムなのに、場内で用を足すことはできないようだ。

入場は、数人単位で行う。最初にプロモーションビデオを視聴し、全員で「うんこー!!」と声を合わせると、いよいよミュージアム内部へ。いきなり、10個ほど便器が並ぶ光景が広がる。参加者は並んだ便器に座り踏ん張ると、何もなかった便器の中にプラスチック製の「マイうんこ」が現れる。スタッフが「普段は見られない姿が見られます」と説明する通り、子どもから大人までが便器の上で力む姿は圧巻だ。マイうんこは、持ち帰ることができる。「ナイスうんこ!」という掛け声とともにスタッフが棒を差し込み、場内を棒付きうんこを持った人たちが闊歩(かっぽ)する仕組みだ。

中央には「うんこ・ボルケーノ」が鎮座。一定時間ごとに「噴火」し、場内はうんこの地鳴りとともにシュプレヒコールが鳴り響いた。

著名人のうんこも展示
ミュージアム内はいくつかのエリアに分かれている。「ウンスタジェニックエリア」内の「フライングうんこ」というコーナーでは、大小さまざまなうんこが宙に浮かぶ。「愛のうんこルーム」では、青・赤の便器一対が置かれており、カップルが写真を撮る姿も散見された。グッズを販売する「うんコンビニ」では、うんこがあしらわれたおにぎり、カップ麺、ドリンクなどがインテリアとして配置されている。

「ウンタラクティブエリア」ではさまざまなアクティビティーを楽しめる。地面に投影されるカラフルなうんこを踏むことで得点を競う「Hop!Step!Jumpoo!」や、「うんこ!!」と大きな声で叫べば叫ぶほど大きなうんこができる「うんこシャウト」など、全身を使って楽しむエリアだ。うんこシャウトでは、普段なかなか見られない、大人が声を大にして「うんこ!!」と叫ぶ姿を見られる。できたうんこは「東京スカイツリー級」や「ヒヨコ級」などのランク付けがなされ、筆者が訪れた際の最大記録は730メートルほどだった。大人が有利というわけでもなく、子どもでも東京スカイツリー級のうんこを量産していた。うんこミュージアムYOKOHAMAにはなかった「うんこ白刃どり」では、マイうんこを機械にセットし、不規則なタイミングで落下してくるうんこをキャッチする。数あるアクティビティーの中でも1番人気で、行列ができていた。

「クソゲーセンター」では、うんこにまつわる「クソゲー」を多数用意。唐突にフレームインしてくるうんこをタイミング良く撮影するゲームや、サッカーボールではなくうんこをシュートしてゴールを狙う「UNKO PK」などのゲームがあった。

順路の最後には、世界各国のうんこに関するグッズが展示されていたり、うんこを描いたりできる「ウンテリジェンスエリア」がある。著名人の描いたうんこも数多く展示されており、矢野顕子さんや片岡鶴太郎さんのうんこも展示されていた。ミュージアムを存分に楽しんだ後は、マスコットキャラクターである「ウンベルト」の横に広がる便器から、自らがうんことなって退場する。

「うんこのリーディングカンパニーに」
なぜ、ここまでうんこにこだわるのか。運営元のカヤックでは、これまでうんこミュージアム以外にも「うんこ名言カレンダー」、さらにはオンライン講義サービスである「UN高」などさまざまなうんこビジネスを展開してきた。中でも「うんこ演算」は、大ヒットした「うんこ漢字ドリル」が登場する6年も前に発売。うんこを通して算数を楽しく学ぶアプリだ。同社の柳澤CEOは「うんこは最強の知的財産である」と捉えている。その一方で、これまで展開した商品・サービスはどれも大ヒットにまでは至らなかった。「うんこ漢字ドリルが大ヒットしたときには、悔しい思いをした」と担当者は話す。

うんこミュージアムの設立については、複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」が横浜市にオープンしたことがきっかけ。アソビルを運営するアカツキライブエンターテインメントから「一緒に面白いことをやりませんか」と声掛けがあった。その当時カヤックでは、漫画や絵文字など2次元で人気だったうんこを3次元化する企画を考えていたという。アソビルを機に、「うんこのリーディングカンパニーになる」(カヤックの担当者)という野望を実現する狙いもあった。設立に際して、両社の中に体験型コンテンツの企画経験があまりなかったことから、エンターテインメントの本場であるロサンゼルスへ視察旅行に行くなど、二人三脚で企画を練り上げたという。

うんこミュージアムYOKOHAMAでは「固定概念を水に流す」をコンセプトに掲げた。「うんこはカワイイ」というテーマを伝えるために、場内に茶色のうんこはない。また、筆者の訪問したTOKYOの場内には、甘い香りが漂っていた。担当者は「油断するとすぐ既存のうんこ観が出てくる。従来のうんこの持つ『臭い』『汚い』といったマイナスイメージを180度転換させたいと考えた」と話す。うんこに対する既成のイメージを感じさせるものは一切排除した。

結果として、「驚きやわくわくを提供するエンターテインメントになった」と自信を持つ。お台場進出の際には、テーマをさらに強化し、「MAXうんこカワイイ」を掲げる。フォトスポットを増設したり、グッズを拡充したりして、「『うんこカワイイ』を最大限に追求した」

うんこは海を渡る。10月には、中国の上海でのミュージアム開催を予定。国内外での開催を進めながら、ゆくゆくはエンターテインメントの本場であるロサンゼルスへの進出を目標としている。うんこの波は、日本国内のみならず世界をものみ込むだろうか。