「安心して自衛隊を任せられると思ったのだが…」
沖縄県宮古島付近で起きた陸上自衛隊のヘリコプター事故で、死亡した5人のうち1人の身元が21日、坂本雄一前第8師団長(55)=同日付で交代=と確認された。令和元年、台風19号被害で災害派遣要請を受けた自衛隊は、陸海空の指揮系統を一本化した統合任務部隊を編成、3万1千人態勢で対応に当たった。このとき、坂本前師団長は陸自の部隊運用を束ねる陸上総隊の運用部長の立場にあった。
当時、陸上総隊司令官を務めた高田克樹氏(60)は「坂本君による海空との調整は、素晴らしいのひと言だった。どこにどれぐらいの部隊を投入すればよいかなど、多くの進言をしてくれたのも彼だった」と振り返る。
どんな難題に対しても解決策を導き出そうと考えていたといい、高田氏は「坂本君から『できない』という意見をただの一度も聞いたことがない」と明かす。坂本前師団長について特に印象深いのが、部下との向き合い方だったという。
「会議の際、部下が用意した書類にミスが見つかっても、『自分が事前に目を通しているのだから、これは自分の責任だ』と、決して責めることがなかった。坂本君の下にいる隊員はみな、彼を兄貴のように慕っていた」
退官をこの翌年に控えていた高田氏は「坂本君はいい将官になる。安心して自衛隊を任せられると強く感じた」と話す。
「本当に言葉もない」
高田氏はこう悔しさをにじませた。