酔って「こっちさ、たつから」「俺はゴミなんて出さない」 青森5人死亡火災、92歳親族老人の憎悪を募らせた孤独な日常

青森県六戸町で自宅が全焼し、一家4世代4人を含む5人の焼死体が見つかった。全焼した自宅玄関で遺体として発見された親族の92歳男性が事件に関与した可能性があるとみて捜査が続けられている。この男性が抱えていた一家への恨みは深いものがあった。【前後編の後編。前編から読む】
放火の被害にあったのは青森県六戸町犬落瀬の十文字利美さん(68)宅。火災現場で遺体で見つかった砂渡好彦氏(92)は、利美さんの母であり火災で亡くなった和子さん(88)の兄にあたる。十文字一族はこの集落で代々名家として知られている。放火の背景には、好彦氏の一方的な恨みがあったようだ。
好彦氏は恒常的に和子さんへの不満を口にしていて、近隣住民からは多くの証言が得られた。ただ、その憎しみは和子さんだけではなく十文字一家そのものに向けられており、「“かたきをとる”とよく言っていた。家に火をつけると聞いたのも一度や二度ではない」(近隣住民)と、強い憎しみを募らせていたことが窺える。なかには「放火をするような人には見えない。十文字家に不満をもらしていたのは知っていたが、表情は優しかった」という声もあったが、好彦氏は近所でも孤立していたという証言もあった。別の近隣住民はため息交じりにこう語る。
「近所付き合いがまったくなく、町内会にも入っていなかった。ごみも収集場に出さず、『俺はゴミなんて出さない』と話していた。溜まったごみはどうしていたのかわからない」
好彦氏の自宅を訪れると敷地内には廃材や空き缶、錆びた調理器具、焼酎の4リットルボトルなどが散乱していた。近くの商店の店主は昼から酒に酔った好彦氏をよく目撃したという。
「酒は焼酎が好きでね。近所のスーパーで大きなペットボトルを買っていた。昼間から飲んで、千鳥足のようにフラフラと歩いていることもあった。酔っていると上機嫌になるタイプで、あるとき街中で酔ってぱらっているところで(好彦氏が)知り合いから『若いね』と声をかけられたんだけど、『まだ(股間を指で示して)こっちさ、たつから」と言っていた。奥さんも酔っぱらった好彦が寝る頃を見計らって家に帰っていた時期もある。変わりモンだよ」
しかし、ある時期までは好彦氏も家庭に恵まれ、真面目な生活をしていたという。
「それが変わっちまったのが家族の不幸。好彦の奥さんは20年ほど前に病死。子供たちももしばらく見ていないから、孤独だったんだろう。
昔は大工をやっていてちょっと前までは農家だった。その時は周りの家とお互い手伝っていたこともあったが、ここ何年かは仕事もしていない。少し前に人に畑を借りて、にんにく栽培をやったが、経験不足でうまく育たなかった。年金はもらっていたはずだが、お金がないようで、いつもイライラしていた」
十文字一家と好彦氏の間に何があったのか。献花に訪れた青森県警本部長は「真相解明に向けて全力を尽くします」とコメントを残している。【了。前編はこちら】