「日本でも暴力、テロ日常に」朝日新聞襲撃36年 市民ら現状に懸念

1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件から36年を迎えた3日、事件を風化させまいと西宮市の支局を訪れた人々は、日本社会の現状に懸念を抱きながら、殺された小尻知博記者(当時29歳)の遺影に花を供えたり、手を合わせたりしていた。
小尻記者と同じ立命館大で憲法を学んだ京都市内の寺の住職、中野錬浄さん(57)は「最近は日本でも暴力やテロが日常になってしまった」と嘆き、「僧侶として、こんな事件の起きない世の中を作りたい」と話した。
西宮市内に住む元大学講師の女性(73)は、立場の弱い人に寄り添った小尻記者の人柄を思い、涙をにじませた。「自由に議論ができる社会であるべきだが、強い者に有利な言論になっている。マスコミの姿勢にも問題がある」と悔しそうに語った。
同市内の動物保護団体代表の女性(63)も「理不尽な事件だが、これ以降、どの新聞社も書き方が変わり、正面から批判ができなくなったと感じる。新聞社は外に開かれ、市民の駆け込み寺のような場所であるべきだが、警備も厳しくなっている」と懸念した。
在日ミャンマー人を支援している同市在住のケアマネジャー、粟野真造さん(63)は「ここに来ることで事件の記憶を保っている。国軍に弾圧され、言論の自由がないミャンマーの人を今後もしっかり支えたい」と気持ちを新たにしていた。【稲田佳代】