新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行することで、感染者数の発表方法や、医療体制、感染した際の行動など、さまざまな分野でこれまでとは異なる対応が始まる。「平時」となる社会で生じる主な変化をまとめた。
定点把握発表は金曜日
感染動向の把握方法では、新規感染者数が「全数把握」から「定点把握」となり、国や自治体からの毎日の発表はなくなる。季節性インフル同様、約5千の定点医療機関からの報告を国立感染症研究所が集計し、週1回、金曜日にウェブサイト上で公表する。前週月曜日から日曜日までの分で、初回は19日(8~14日分)。
重症者数や入院者数は医療逼迫(ひっぱく)の度合いを測る重要指標のため、定点把握になった後も一定期間は全国の医療機関からの報告を継続する。死者数は「人口動態統計」をもとに、総数を2カ月後、詳細な死因別は5カ月後をめどに推移を把握する。
感染者は5日間自粛を
体調不良時に取るべき行動も変わる。
厚生労働省は、5類移行後にコロナ感染が疑われる場合は、まず国の承認を受けた検査キットによる自主検査を呼びかけている。結果が陽性でも、症状が軽い場合は自宅療養。高齢や持病などのため重症化リスクの高い人や、症状が重くて受診を希望する場合は、医療機関に連絡する。
法律に基づく陽性者への外出自粛要請はなくなる。ただし、厚労省は発症日(無症状の場合は検体採取日)翌日から5日間は外出を自粛し、5日目に症状が続く場合は、熱が下がるなどしてから24時間程度が経過するまで自粛を延長することを推奨している。
さらに、発症後10日間が経過するまではウイルスを排出する可能性があるため、マスク着用や、高齢者ら重症化リスクが高い人との接触を控えるなどの現行の配慮を引き続き求めた。
一方、濃厚接触者については今後特定されなくなるため、原則5日間とされた待機規定もなくなる。
家族感染でも登校OK
学校の感染対策は大幅に緩和される。
児童生徒の体温を毎日チェックして学校に提出させたり、机やドアノブを日常的に消毒したりする必要はなくなり、子供同士の距離を保つための教室内での座席間隔の確保も不要となる。合唱や調理実習、理科の実験といった感染リスクの高い活動も、近距離での発声を控え、身体的距離を確保した上で実施可能だ。
感染した児童生徒の出席停止期間は「発症から5日間が経過し、かつ症状軽快後1日を経過するまで」に短縮。同居家族が感染した児童生徒も、本人が感染していなければ出席停止の対象にはならない。感染不安を理由に学校を休んでも欠席として扱わない特例措置は継続する。
医療費は原則自己負担
限定的だった外来患者の対応医療機関は、季節性インフルを診療する内科や小児科などに広げていく方針だ。これまでの約4万2千から6万4千への拡大を目指しているが、8日時点では2千増の約4万4千。当面は対応医療機関名を自治体が公表する。検査などを含め公費で補助されていた医療費は季節性インフル並みの自己負担となる。ただ急激な負担増を避けるため、高額な治療薬は公費負担を続ける。
入院患者は、受け入れ実績がある施設が当面中心となり、将来的には全病院で対応できるようにする。医療機関数は従前の約3千(最大約5万3000人)から約8300(同約5万8千人)に増加する。入院費については毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」を適用、さらにそこから最大2万円を軽減する。
こうした公費支援は9月末までの経過措置で、以降は感染状況などによって再検討する。