アルミと強アルカリ性洗剤で水素ガス 容器移し替えには要注意 西新井駅缶破裂

東京都足立区の東武鉄道西新井駅の駅構内でコーヒー缶が破裂して液体が飛び散り、女性2人が負傷した事件。破裂した缶の中の液体は強アルカリ性洗剤の可能性が高いとみられ、移し替えられていた。警視庁は缶のアルミニウムとの化学反応で気体が発生し、破裂した可能性があるとみて詳しく調べている。過去にも同様の事故が発生しており、東京消防庁は洗剤の移し替えに注意を呼びかけている。
「パンと音がして、缶が割れた」。8日午後4時前、西新井駅の駅員から110番通報があった。西新井署員が駆け付けたところ、券売機近くに破裂したコーヒー缶が転がっていた。近くにいた駅利用客の20代女性に缶から飛散した液体がかかり、顔と下半身にけがをし、女性を介抱した20代の女性駅員も手に痛みを訴え、病院で手当てを受けたという。
同署によると、破裂の数分前に缶を置いた利用客で中国籍の男性(49)から任意で事情を聴いたところ、「勤め先の洗剤を家で使うため缶に入れた。破裂は故意ではない」と説明。
現場で見つかったコーヒー缶はアルミニウム製のふた付きタイプで、穴が開いて変形していた。警視庁の簡易検査の結果、液体は強アルカリ性洗剤の可能性が高いことが判明。同署は発生した気体が缶の中でたまって破裂し、中の液体が飛散した可能性もあるとみて、慎重に調べている。
東京消防庁によると、アルミ缶などの金属製容器に洗剤を入れると化学反応により水素ガスが発生。ふたなどで密封された場合は内圧が高まり、破裂する恐れがある。密封されていなくても容器が溶けることがあり、漏れ出た洗剤でやけどする危険性もあるという。
洗剤の事故を検証する同庁の実験では、ふたをしていないアルミ缶にアルカリ性洗剤100ミリリットルを入れて放置すると、洗剤に含まれる成分がアルミを溶かし、水素ガスが発生。約6時間後に缶の側面に穴が開き、洗剤があふれた。
同庁によると、アルミ缶とスチール缶に酸性洗剤を入れた場合も、同じような反応が起き、酸性洗剤は塩素系洗剤と一緒に使用すると有毒なガスが発生することがあるという。
平成24年には、東京メトロ丸ノ内線の車内で、乗客が持っていた強アルカリ性の業務用洗剤が入ったアルミ缶が破裂し、10人以上の乗客が負傷。30年にもJR新宿駅のホームで、強アルカリ性の業務用洗剤を移し替えたアルミ缶が破裂。駅利用客2人が負傷した。
同庁は、種類の違う洗剤を一緒に使ったり、洗剤を販売時から別の容器に移し替えたりしないように呼びかけている。(王美慧)