8日、東京・銀座の高級腕時計専門店に3人組の男が押し入った事件の捜査は進んでいる。それにしても気になるのは、なぜわざわざ換金しにくい高級腕時計を狙ったのか、どうやってカネに換えるつもりだったのか、ということだ。日本で売りさばくと、ほぼ確実に足が付いてしまうからだ。その裏を探ってみると――海外組織の存在が浮かび上がってきた。
犯行直後に東京都港区で見つかった逃走車両が、袋小路に乗り捨てられていたことも判明。道路脇の建物にぶつかった状態で止まっており、警視庁は付近のマンションに侵入した疑いで逮捕した10代の男4人が、パトカーに追跡されやみくもに逃走したとみて調べている。警視庁は10日、4人を送検した。うち1人は事件時、運転役として車内にいたとみられる。
放置された車の中には誰も乗っていなかったが、車の中から約40点、そして付近では約30点の時計が入った黒いバッグが見つかっている。奪われた腕時計は七十数点で、ほとんどが回収されたとみられている。被害額は2億5000万円相当とのことだ。
男たちは「お互いのことは知らない」と言っており、SNS上で高額報酬をうたう“闇バイト”に応募し、指示役に従って強盗したとみられている。
この事件で不可解なのは高級腕時計を盗んでも、国内では換金がほぼ無理なことだ。3月には東京・上野の貴金属店、4月には東京・渋谷のアクセサリー店に強盗が入った。
元暴力団関係者は今回の事件に関して、違和感を拭えないという。「この手の強盗はいかに換金するかが問題です。高級腕時計や貴金属はシリアルナンバーで管理されており、国内で転売すれば必ずバレます。逮捕された10代の4人が海外に売却するルートを持っていたとは考えられない。未経験であろう10代だけで実行役のグループを組ませるのは、ルフィ的な日本人による遠隔操作犯罪としても奇妙です。指示役もしくは仲介役が海外組織とかなり近い関係にあったのかも。例えば、以前流行した“爆窃団”を使ったような海外の組織です」と指摘した。
爆窃団は1980~90年代、そして2005~10年代に犯行を重ねた。隣接するビルとビルのすき間に油圧ジャッキを当てて壁をぶち壊し、貴金属店からごっそり盗む手口だ。
「爆窃団の登場は米国の経済悪化によるドルの信用低下により、紙幣などのお金が信用されなくなり、貴金属などの信用が上がったことに起因しました。中国、韓国、台湾の組織があり、組織の指示で入国して、強盗をやれるだけやって、日本にいる組織にブツを渡して帰国する手口でした。海外に流す際は、貨物船の船員を使ってごっそり運ばせたり、超高価なものなら自ら2、3点を着用してそのまま飛行機に乗るという手法でした」と同関係者。
男たちだけのずさんな犯行でないとすれば、海外の組織もしくはその組織とつながる指示役が、「失敗して当然」として、使い捨ての闇バイトに強盗をやらせたのかもしれない。指示役は海外組織、実行役は日本人、という構図かもしれない。