ニュース裏表 伊藤達美 岸田首相は〝自民党結党の精神的支柱〟憲法改正の牽引を わが国の安全保障環境は戦後最悪、党総裁としてリーダーシップ発揮が必要

日本国憲法は「憲法記念日」の3日、施行から76年を迎えた。憲法は国の基本法だ。各国は時代の変化、状況に対応するため、憲法改正を行ってきた。現行憲法には国民主権や基本的人権の尊重、平和主義といった優れた面もあるが、決して「不磨の大典」ではない。これほど長い間、憲法を一度も改正したことがないのは、世界中探してもわが国だけではないか。
実際、現行憲法では対応できない現実があることも否定できない。
自民党は国会の憲法審査会に4つの改正項目を提案している。
①9条1項・2項とその解釈を維持し、憲法に自衛隊(自衛権)を明記②参院の合区解消、各都道府県から必ず1人以上選出③緊急事態における国会の機能の維持④教育の重要性を国の理念として位置づけ、国民誰もがその機会を享受できるようにする(私学助成の規定を現状に即した表現に変更する)―。
これらは、最低限の改正項目ではないか。特に、わが国周辺の「ならず者国家」への対応は喫緊の課題である。
北朝鮮は存在を誇示するかのように弾道ミサイルを乱射し、わが国の排他的経済水域(EEZ)に着弾させ、時には領土の上空を通過させる暴挙を繰り返している。
中国は覇権主義を加速し、軍事演習と称して、わが国のEEZ内に弾道ミサイルを撃ち込んだ。さらにウクライナを侵略しているロシアは、専制主義国家化を進め、不法占拠を続ける北方領土を含む日本周辺での軍事活動を活発化させている。
わが国の安全保障環境は戦後、最も厳しい状況にあり、最悪といって過言ではない。
こうしたなか、少なくとも、憲法学者の間で「自衛隊違憲論」がはびこるような事態だけでも早急に解消すべきだろう。
岸田文雄首相(自民党総裁)は憲法記念日に産経新聞の単独インタビューに応じ、自身が表明している2024年9月までの自民党総裁任期中の憲法改正実現について「強い思いはいささかも変わりない」と強調した。
岸田首相は今年2月26日の自民党大会でも、「時代は憲法の早期改正を求めていると感じている」と述べ、憲法改正への強い意欲を示している。
しかし、意欲だけでは憲法改正はできない。いま、岸田首相に求められることは、憲法改正への実践的言動である。国民に対し、憲法改正の必要性を丁寧に訴えて、理解を得ることだ。
自民党の都道府県連組織や人材をさらに動かすなど、総裁としてもっとリーダーシップを発揮する場面があっても良いのではないか。
自民党の結党精神の柱は憲法改正である。今こそ、岸田首相と自民党は原点に立ち返り、あらゆる方法で憲法改正を牽引(けんいん)すべき時が来ている、と考える。 (政治評論家)