全国一のオクラ産地でテントウムシ活躍中 害虫退治、農薬減らせ

全国一のオクラ産地で、害虫のアブラムシを食べるテントウムシを活用した栽培手法の検証が進められている。農薬を減らすことで環境にも優しく、農家にとっては負担軽減につながることが期待される。小さな昆虫の活躍で、どれだけ大きな効果を生み出せるか――。
「アブラムシがいる場所にテントウムシをまくと、次の日にはいなくなっている。このハウスにはまだ1回も農薬をまいてないよ」。4月中旬、鹿児島県指宿市でオクラを栽培するビニールハウスを訪ねると、農家の前川信男さん(57)が誇らしげに語ってくれた。
害虫にとっての天敵を使った農法は、国際的には総合的病害虫・雑草管理(IPM)と呼ばれる栽培方法の一つだ。国内でも環境に優しい農業を推進する「みどりの食料システム法」が2022年7月に施行され、国全体でこうした取り組みを後押しする。
法制化を契機に、指宿市や県、JAなどは同10月、IPM栽培に向けたプロジェクト会議を発足。今年3月には市内約40のオクラ農家に10アール当たり200匹のテントウムシを無料で配り、県や市、JAの職員が約1週間ごとにハウスを回り、防除効果などを確認している。
期待されるのは害虫駆除に使われる農薬使用量の削減だけではない。農薬散布の作業について、市農政課の中村翔悟さん(41)は「ハウスの中での作業は、サウナの中で雨がっぱを着て作業するようなもの」と解説する。テントウムシの活躍は、こうした農家の労力を減らす利点もある。
プロジェクト会議は、IPM栽培について解説する漫画も製作し、主に天敵を活用した栽培手法の認知度アップも図る。夏場に迎えるオクラの収穫シーズン後は、実践した農家をアンケート調査し、その効果や普及に向けての課題を洗い出す。
今回の実証試験に参加する前川さんは、7年前からテントウムシによるIPM栽培に先行して取り組んできた。「(害虫は)従来は効果のあった農薬が、数年後には耐性ができて効かなくなることがある。テントウムシがいるエリアが広がれば、市全体にとってもメリットは大きい」と期待を寄せる。【宗岡敬介】