シートで窓覆う 不審物チェック
19日に開幕する先進7か国首脳会議(G7サミット)を前に、広島では厳重な警備が敷かれ、緊張感が高まっている。18日にはバイデン米大統領ら各国首脳が続々と広島入りする予定で、大規模な交通規制も始まる。初めて被爆地で開かれる歴史的なサミットを控え、警察当局は警戒を強めている。
サミット初日に各国首脳らが視察する予定の広島平和記念資料館(広島市中区)には16日、1階の窓ガラス全面に白いシートが貼られた。館内を見えないようにし、首脳らへの襲撃を防ぐための異例の措置だ。
資料館がある平和記念公園は18日正午から立ち入りが規制される予定で、公園の外周には不審者の侵入を防ぐため、既に高さ1・8メートルのフェンスが設けられている。17日も警察官が24時間態勢で公園内を巡回。公園の横を流れる川には、ゴムボートに乗って警戒する警察官の姿も見られた。
公園を訪れた広島市東区の主婦(54)は「どんどん緊迫してきた。被爆者の声を世界に届けるためにも、無事に終わってほしい」と話した。
警察庁は今回のサミットで、地方開催のサミットでは過去最多となる2万4000人態勢で警備を行う。岸田首相の選挙演説会場に爆発物が投げ込まれた事件を受け、職務質問や不審物のチェックを強化する。
初日に各国首脳が訪れる予定の宮島(広島県廿日市市)も、フェリーターミナルや世界遺産・ 厳島 (いつくしま)神社の参道など至る所に警察官が立ち、フェリー内でも海上保安庁職員が警戒している。
18日正午からは「識別証」を持つ島民や事業者以外の入島が制限される。廿日市市は同日から、規制を知らずに訪れた観光客らに臨時宿泊所を用意する。
旅館「みや離宮」には北海道警と静岡、愛知両県警の計約300人が宿泊。島内の拠点にしており、土居裕明支配人(66)は「当初は大勢の警察官を物々しく感じたが、今は頼もしい。事件や事故が起こらないことを祈りたい」と語った。
主会場となるグランドプリンスホテル広島(広島市南区)は瀬戸内海の 宇品 (うじな)島にあり、海上でも大規模な警備が実施されている。
海上保安庁は期間中、全国から集結させる巡視船艇などに加えて無人航空機を投入し、会場周辺の上空からも24時間態勢で警戒する。
サイバー攻撃も警戒…専門捜査員や技術職員派遣
広島サミットでは、日本を標的としたサイバー攻撃も警備上の懸念となる。警察当局は「ハクティビスト(政治的意図をもったハッカー集団)」による攻撃への警戒を強めている。
国際的な大規模イベントでは近年、ハクティビストなどによる攻撃が後を絶たない。2018年の韓国・ 平昌 (ピョンチャン)冬季五輪ではシステム障害でチケットが一時発券できなくなるなど、大会運営に影響が出た。
警察庁は広島サミットに合わせ、サイバー攻撃の専門捜査員や技術職員を各地の警察から広島県警に派遣している。電力事業者などと連携し、主会場のホテルなどでシステムに異常を検知した場合、即応できる態勢を取っている。
特に懸念されるのは、大量のデータを送りつけてシステムをダウンさせる「 DDoS (ディードス)攻撃」だ。昨年9月には国内の公的機関や民間企業約20団体のシステムが攻撃を受け、親ロシア派のハッカー集団が犯行を認める声明を出した。
今月上旬に法務省のホームページで起きた障害では、国際ハッカー集団「アノニマス」の関与が疑われている。アノニマスを名乗るツイッターには今年2月、広島サミットへの攻撃を示唆する投稿があり、警察当局が警戒している。
情報セキュリティー企業「トレンドマイクロ」の岡本勝之氏(57)は「サミットと直接関係がなくても、例えば『広島』と名の付く機関が狙われる可能性がある。システムの状況をいつも以上に注視し、備える必要がある」と話した。