先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が19日に開幕し、最高レベルの警備態勢が敷かれた広島市内は、かつてないほどの緊張感に包まれた。「被爆者の声に耳を傾けて」「広島から平和に期待」。被爆地、広島の市民らはG7首脳らの平和記念公園訪問を固唾をのんで見守った。
最大約2万4千人の警察官が動員され、厳戒態勢の広島市内。普段は多くの人でにぎわう市内中心部も交通規制や休校休業の影響で人出はまばらだった。
午前9時すぎ、米軍が広島に原爆を落とすための目印になったとされる相生橋など、平和記念公園周辺には数メートルおきに警察官が立ち並び、多数のパトカーや白バイが巡回。緊張感はピークに達した。
市内在住の会社員、井上直樹さん(56)は「特に欧州の首脳らに被爆の実相を生の目で見てもらい、被爆者の声に耳を傾けてもらうことに大きな意味がある」と強調。「核兵器を使わない、使わせないという認識を改めて共有することが大事だ」と訴え、平和な世界実現に向けた議論を加速させてほしいと望んだ。地元・広島での開催ということもあり、岸田首相のリーダーシップの発揮にも期待し、「実りの多い3日間にしてほしい」と話した。
午前10時20分ごろから、各国首脳らを乗せた車がパトカーに先導され、次々と公園内に入っていった。冷たい小雨が降る中にもかかわらず、最後に到着したバイデン米大統領を乗せた専用の特殊車両「ビースト」が通り過ぎると、車列を待ちわびた市民らからひときわ大きな歓声が上がった。
広島サミットの影響で会社と学校が休みになり、息子2人とともに車列を待っていた市内在住の会社員の男性(46)は「一生に一度の経験なので子供たちにも見てほしかった。広島から平和につながることに期待したい」と歓迎した。
一方、交通規制による影響で、市内の一部では渋滞が発生。タクシー運転手の男性は「どうせだったら全て規制してくれたらいいのに」とため息をついた。(橘川玲奈、桑村大)