重大少年事件の記録が各地の裁判所で廃棄されていた問題で、最高裁の検証対象となっている52件の少年事件記録の大半は、永久的に保存する「特別保存」に該当するかどうかを吟味されないまま機械的に廃棄されていたことが関係者への取材で判明した。最高裁は、事件記録を歴史的資料として残す意識や仕組みが不足していたと総括する方向で最終調整している模様だ。
23日に事件記録の保存・廃棄の在り方に関する有識者委員会が開かれ、最高裁作成の検証報告書案が了承された。最高裁は、最高裁の裁判官全15人で組織する「裁判官会議」に諮った上で、検証結果を公表する方針。
問題を巡っては2022年10月に神戸連続児童殺傷事件(1997年)の記録が神戸家裁で廃棄されていたことが発覚。最高裁は報道機関から保存の有無について問い合わせがあった少年事件52件について調査を始めた。長崎市で起きた男児誘拐殺人事件(03年)や、京都府亀岡市で集団登校中の児童らが暴走する車にはねられた事件(12年)も含まれる。
最高裁の内規と通達では、少年事件の記録は少年が26歳になるまで保存すると定め、社会の耳目を集めたり、世相を反映して史料価値が高かったりする事件は特別保存を義務付ける。19年に重要民事事件の記録が東京地裁で廃棄されていたことが判明し、最高裁は20年に「主要日刊紙2紙以上に掲載された事件」と特別保存の具体的な運用要領を全国に通知した。
関係者によると、52件は91年から12年に起きた事件で、ほとんどは少年が26歳になったことから機械的に廃棄されていた。一部は裁判所内で事件の重大性などが議論されたものの特別保存指定には至らなかったという。最高裁は再発防止策として、運用要領の改定などを検討しているとみられる。
最高裁は、少年事件とは別に特別保存とされずに廃棄された重要判例となった民事事件35件と、特別保存に指定されながら大分地裁で誤って廃棄された民事事件6件の経緯も調べている。【遠藤浩二】