「知床遊覧船」と桂田精一社長、甲板員遺族が提訴…「安全配慮義務に違反」

北海道・知床半島沖で昨年4月に観光船「KAZU I(カズワン)」(乗客乗員26人)が沈没した事故で、死亡した同船甲板員曽山 聖 (あきら)さん(当時27歳)の両親が、運航会社「知床遊覧船」と桂田精一社長(59)に計約1億1900万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたことがわかった。事故について同社側の民事責任を問う提訴が明らかになるのは初めて。
国の運輸安全委員会の調査などでは、荒天が予想される中で同業者らが出航を控えるよう助言したのに、桂田社長が豊田徳幸船長(当時54歳、事故で死亡)に、海が荒れれば引き返すという条件付きで出航を認めたことが判明。桂田社長が資格要件を偽って運航管理者に就任していたことも明らかになっている。
原告側は2月28日付の訴状で、桂田社長の出航判断の誤りが事故を招いたと主張。「会社側は安全第一で出航の可否を判断するなど、船の安全性を確保するための安全配慮義務に違反した」と訴えている。会社側は5月26日付で請求棄却を求める答弁書を提出。第1回口頭弁論の期日は今後決まる。
事故では乗客乗員20人の死亡が確認され、6人が行方不明となっている。曽山さんは昨年4月7日に入社し、同月23日の事故当日は甲板員としての乗船初日だったという。運輸安全委員会は昨年12月に公表した調査の経過報告書で、沈没の直接的な要因は船首甲板ハッチからの海水の流入だったと分析している。