日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなっている。北朝鮮は31日午前6時29分ごろ、北西部東倉里(トンチャンリ)付近から弾道ミサイルの可能性があるものを発射した。政府はJアラートで沖縄県を対象に避難を呼びかけた。北朝鮮が主張する「宇宙発射体」とみられるが、予告した距離を飛行せずに朝鮮半島の西側の黄海に落下したようだ。「台湾有事は日本有事」といわれるなか、中国空母「山東」の艦隊が先週末、台湾海峡を通過し、戦闘機「スホイ30」などが暗黙の「休戦ライン」である中間線を越えたり、台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入した。東アジアの平和と安定を守る日米同盟が注目されるが、懸念される変化もあるという。防衛問題研究家、桜林美佐氏の最新リポート。
よく、「在日米軍基地に〇〇が飛来した」ということがニュースになるが、米軍基地からなくなるものについては話題にならない。しかし、今の日本にとって注視すべきは後者ではないだろうか。
4月8日、米空軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)に、米国からF15戦闘機が来たと報じられた。だが、これはそもそも同基地に常駐していたF15戦闘機撤退に伴う、力の「空白」を作らないための措置だ。
本土から、最新鋭ステルス戦闘機「F22」などを巡回配備するとされ、米側はこちらの方が「抑止力が高まる」としているが、やはりそこに存在しないことを不安視する声は専門家からも出ている。
そのようななか、各地の米軍基地で起きている「小さな兆候」も気にかかる。
このところ、基地で働く多くの民間人従事者が予定を早めて帰国しているのだ。基地内で働く民間人の医療が、軍の施設で受けられなくなっているからだ。
米軍内の医療は、現役の軍人と家族、そして保険料を支払っている元軍人と家族が優先され、予約枠が空いていれば民間人が受診できるシステムだ。これまでは彼らは空き枠で医療を受けられていたが、昨今は医療従事者に余力がないという。
これについて、米軍内では「仕方がない」という見方や、基地外の病院に行くことは地域社会との交流機会になるという考え方もある。今回の取り決めは準備期間が非常に短く、近隣の代替病院も決まっていないまま突入してしまったため、混乱を招いてしまった。
「言葉が通じない」「日米の認可薬が違うため、常備薬の処方をしてもらえない」などの問題が生じた。また、救急搬送先が見つからず、たらい回しになり命を落としたといった事例も起きたという。不安を募らせた人々が、次々に帰国しているのだ。