液体ミルクメーカーがPRに本腰 災害時の役割に注目も北海道地震では配布ためらう自治体も

乳児用液体ミルクは常温保存可能で、断水や停電でお湯が使えない災害時も使いやすい。一方、昨年9月の北海道胆振東部地震では外国製品しかなく、安全性や使用方法の周知が不十分だったこともあり、被災地で活用されなかった。国内製品の販売が今春から始まり、メーカーは需要増を目指してPRに本腰を入れている。【高橋由衣】
母乳に近い栄養分
「初めて飲ませたけれど、嫌がらない。私も味見したけれど、粉ミルクほど甘くなく、すっきりしている」
江崎グリコ(大阪)が今月3日、札幌市で開いた液体ミルクの試飲会。同市手稲区の中野美希さん(25)は、今年1月に生まれた長女架澄ちゃんが哺乳瓶からミルクをおいしそうに飲む姿を見てほほ笑んだ。「地震があった1年前は家に食べ物の備蓄がなく不安だった。液体ミルクも買い置きしたい」と話した。
育児中や妊娠中の女性たちに商品を紹介した江崎グリコ商品開発研究所の永富宏さん(42)は「母乳が赤ちゃんにとって最良の栄養。液体ミルクは(粉ミルクと同じく)母乳に近い成分で作られており、安心して飲んでもらえる」と力説した。
災害時の役割注目
お湯で溶かした後に人肌ほどの温度に冷ますなど調乳が必要な粉ミルクに対し、液体ミルクは開封して哺乳瓶に移し替えれば済む。断水が続いた熊本地震(2016年4月発生)の被災地に外国製の液体ミルクが届けられ、役割が注目された。
胆振東部地震でもフィンランド製の液体ミルク1050本が、東京都から道を通じて厚真・安平・むかわ・日高・平取の5町に送られた。しかし、道は「日本では使用例がなく、衛生管理が難しい」と使用自粛を呼び掛けるかのような内容の文書を送付。各町は住民への配布をためらった。

道地域保健課は「(粉ミルクが使えなくなる)断水に備えて保管してほしいという趣旨だった」と弁明する。
試験導入の自治体も
厚生労働省は昨年8月、液体ミルクの国内製造・販売を解禁。江崎グリコが今年3月、紙パック入り「アイクレオ 赤ちゃんミルク」(賞味期限6カ月、125ミリリットル)を発売すると、明治(東京)も4月にスチール缶入り「明治ほほえみ らくらくミルク」(同1年間、240ミリリットル)を売り出した。雪印メグミルク(東京)のグループ企業も参入を目指している。
国内製品が市販されるようになり、道内の自治体でも備蓄に向けた動きが出てきた。厚岸町は今月、粉ミルクに加え、液体ミルクを試験的に導入した。釧路市も年内をめどに取り入れるという。
署名活動などを通して、国内流通に尽力した横浜市の主婦で一般社団法人「乳児用液体ミルク研究会」代表理事の末永恵理さん(40)は「外出先で粉からミルクを作るのは負担が大きい。北海道でも液体ミルクの備蓄が広がればうれしいし、普段から気軽に使ってほしい」と普及を願う。