神戸市北区の路上で2010年、高校2年生だった堤将太さん(当時16歳)を刺殺したとして、殺人罪に問われた当時17歳の男性(30)の裁判員裁判の被告人質問が8日、神戸地裁(丸田顕裁判長)であった。男性は「異常なことをした。被害者の人生を何もかも奪い、遺族に多くの苦しみを与えた。申し訳ない」と謝罪した。
公判では殺意の有無と刑事責任能力が争点となっている。
男性は被告人質問で、元交際相手とのトラブル後、周囲から悪口や視線を感じるようになったと説明。事件当日も、堤さんの前を通った際に悪口を言われたと感じ、事件に及んだという。「刺しても死ぬとは思わなかった。殺すつもりはなかった」と改めて殺意を否認した。自首しなかった理由を尋ねられると「当時は悪いことをしたと思っていなかった」と話した。
被害者参加制度で出廷した堤さんの父敏さん(64)が「将太がどんなに痛く、怖く、苦しかったか。あなたに分かりますか」と問い詰めると、男性は少し沈黙した後に「分からないです」と答えた。
閉廷後に記者会見した敏さんは「(男性の言葉は)説得力も誠実さもなく、謝罪にもなっていない。いまだに罪の意識がないのだろう」と振り返った。【中田敦子、澤俊太郎】