愛知県警は7日、他人のインターネット口座を遠隔操作し、現金500万円を不正に送金したとして、電子計算機使用詐欺などの疑いで、東京都新宿区のベトナム国籍チャン・ビエット・アイン容疑者(29)を再逮捕した。遠隔操作による不正送金の摘発は全国初とみられる。ベトナム人による犯罪が増えているとの指摘もあるが、犯罪の手口を教えているのは誰なのか。
チャン容疑者の逮捕は3回目。犯罪グループの指示役ともいわれ、国際ロマンス詐欺なども含め計12億円超を得た疑いがあるというから驚きだ。
県警によると、男性(69)のパソコンに「ウイルスに感染した」と虚偽の警告画面を表示。ウソのサポート窓口に電話させ、遠隔操作ソフトをダウンロードさせた後、口座を操作し、容疑者らが管理する口座に500万円を送金した疑いがある。「送金したのは私ではない」と容疑を否認している。
過去2度の逮捕は犯罪収益移転防止法違反容疑で、SNSに「口座を買い取る」と書き込み、2万5000円で通帳とキャッシュカードを買い取っていた疑いがある。名古屋地検はいずれの容疑も処分保留としている。
元暴力団関係者は「来日ベトナム人の数が増えるのと比例して、犯罪も増加している。ベトナム人は、とても強固なコミュニティーを築きます。特に容疑者の住んでいるところから近い、(都内の)新大久保、高田馬場にはベトナム人が集まるベトナム料理店、火鍋店がたくさんあります。そのコミュニティーで助け合いがある一方で、犯罪情報や闇バイト情報もやりとりされています」と指摘する。
国際ロマンス詐欺などの特殊詐欺、さらに今回の遠隔操作による不正送金は、誰かから教わらないととても実行できない犯罪だ。
「日本の反社や中国マフィアが日本で横行している特殊詐欺の手口をマスターして、より安全性が高く、国際通話料金の安いフィリピン、ベトナムにアジトを構えているんです。先月、フィリピン警察がゲーム会社を装った特殊詐欺拠点を摘発したところ、1000人を拘束し、うち380人がベトナム人でした」(同)
日本の反社や中国マフィアから学ぶわけだ。「そのように手口を学んだベトナム人が日本に入って、コミュニティーで共犯者を集め特殊詐欺などをやりながら、手口を教えているのでしょう。それにしても、遠隔操作で不正送金というやり方は、出し子、受け子がいらない特殊詐欺の新形態です」(同)
チャン容疑者は誰かから買い取った口座に不正送金した後、暗号資産(仮想通貨)に交換したとみられる。マネーロンダリングも自前で行っていたとすれば、黒幕、金庫番、回収役、特殊詐欺の掛け子、受け子、出し子などが必要なく、1人で犯罪を完結できてしまう。詳細な手口が広まっていたら、今後、多くの被害者が出かねない。