「婚姻利益を享受できないのは“違憲状態”」福岡地裁が判決、3組の同性カップルが国に損害賠償求めた裁判

同性どうしの結婚が認められていないのは憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、福岡地裁は8日、「婚姻による利益を享受できていないのは憲法に違反する状態」とし、「違憲状態」との判断を示しました。その上で、憲法24条2項(個人の尊厳に立脚した家族法の制定)が「立法権の裁量を超えるものとして憲法に違反するとはいえない、と判断。そのほかの規定も含め、すべての規定が「憲法に違反していない」としました。
原告の同性カップルが求めていた損害賠償の請求も棄却しました。
◆3組の同性カップルが「憲法違反」を主張
全国5地裁で争われた同性婚訴訟の判決が出そろい、「違憲」が2例(札幌、名古屋)、「違憲状態」が2例(東京、福岡)、「合憲」が1例(大阪)と司法判断が分かれました。この裁判は、福岡市や熊本市に住む男性カップル2組と女性カップル1組が、同性婚が認められないのは憲法に違反するとして、国に損害賠償を求めているものです。
◆国側は「同性どうしの婚姻は想定されていない」
主な争点は、▽憲法24条1項(婚姻の自由)▽憲法24条2項(個人の尊厳に立脚した家族法の制定)▽憲法14条(法の下の平等)に違反するかどうかです。国側は、「憲法では同性どうしの婚姻は想定されていない」などと主張していました。
◆福岡地裁の判断は「違憲状態」
8日、レインボーの旗をかかげた原告団が福岡地裁に入り、午前11時に開廷しました。裁判所は判決の中で、同性カップルが婚姻を認められないことについて「婚姻による利益を享受できていないのは憲法に違反する状態」との判断を示しました。その一方で、憲法24条2項(個人の尊厳に立脚した家族法の制定)が「立法権の裁量を超えるものとして憲法に違反するとはいえない」と判断し、そのほかの規定も含め、すべての規定が「憲法に違反していない」としました。原告が求めていた国に対する損害賠償も棄却しています。
◆判決骨子
▽同性カップルの婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する規定(以下「本件諸規定」)は、憲法24条1項(婚姻の自由)及び憲法13条(幸福追求権)に違反しない。
▽本件諸規定の区別取り扱いについては、合理的な根拠が存するものと認められるから、本件諸規定が立法裁量の範囲を超えるものとはいえず、本件諸規定は、憲法14条1項(法の下の平等)に違反しない。
▽同性カップルに婚姻制度の利用によって得られる利益を一切認めず、自らの選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない本件諸規定は、個人の尊厳に立脚すべきものとする憲法24条2項(個人の尊厳に立脚した家族法の制定)に違反する状態にある。しかし、制度設計の多様性、社会の変化の時期に照らせば、本件諸規定は憲法24条2項に違反しない。
▽国会が同性間の婚姻を可能とする立法措置を講じないことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとはいえない。