遺産相続をめぐる民事裁判でおととし、和歌山地裁で手続き上の誤りがあり、審理に関わっていない裁判官が判決を言い渡しました。
原告は勝訴しましたが適正な判決を出し直すよう求め、最高裁は「全面勝訴でも控訴できる」という判断を示しました。
裁判記録などによりますと、おととし3月、和歌山県内に住む原告の男性(71)は、遺産相続をめぐり土地の所有権の一部を移転登記するよう求め、和歌山地裁に提訴しました。
おととし5月、第一回口頭弁論で即日結審し、翌月、和歌山地裁は原告の男性側の主張を全面的に認める判決を言い渡しました。
ところがこの裁判の中で、審理を担当していた裁判官が判決日に登庁できなくなり、審理に参加していない別の裁判官が判決を言い渡す、民事訴訟法上違法な手続きが取られていました。
本来は後任の裁判官が改めて口頭弁論を開いた後、判決を言い渡す必要がありました。
原告の男性は「移転登記が無効になる可能性がある」などとして、適正な判決を出し直すように大阪高裁に控訴。
大阪高裁は手続きの違法性は認定した一方で、男性が全面勝訴したことをふまえ、控訴を棄却しました。
これに対し男性側が上告し、最高裁はことし3月、男性の控訴理由が正当なものであるとして、「全面勝訴でも控訴できる」という判断を示し、大阪高裁に審理を差し戻しました。
和歌山地裁は手続きの誤りを認め、すでに男性に対して謝罪し、「今後このようなことがないように職員の指導を徹底していきたい」とコメントしています。